AI・データサイエンス教育研究センター設置の背景
東京女子大学は東京都杉並区に本部を置く、1918年設立の歴史ある大学である。初代学長は新渡戸稲造。キャンパスは武蔵野の閑静な住宅街の一角に位置しており、1931年に建築された本館は登録有形文化財にも指定されている。今も昔も学生たちからは「東女(とんじょ)」の名で親しまれる、由緒正しい女子大学である。
その東京女子大学でさえ、近年の大学環境の厳しさと無縁ではない。少子化による応募学生の減少による他大学との競争や、社会からの理系教育への要請、女子大の人気低下など、さまざまな障壁が立ちはだかる。
本稿では、筆者が同大学のキャンパスを訪問し、AI・データサイエンス教育研究センター長である竹内敦司教授(以下、竹内教授)にインタビューしたので、その内容をお伝えする。竹内教授は同センターの設置当初から一貫してデータサイエンス教育の企画・運営に携わっており、現在はセンター長の任に就いている。いわば東京女子大学におけるデータサイエンス教育の表も裏も知る人物であり、そのキーパーソンにこれまでの経緯や実績、苦労話などをお聞きした。
東京女子大学は、建学以来キリスト教の精神に基づくリベラルアーツ教育を行っており、現代教養学部内に文系理系にわたる学科を内包している。もともと、各学科専攻の各学問分野で文理を問わずデータサイエンスを活用してきた土壌があり、2022年にAI・データサイエンス教育の充実を目的として、AI・データサイエンス教育研究センターを設置した。
2024年度からは全学的な教学改革を機に、AI・データサイエンス教育に係る科目群をリニューアルし、基礎的な内容については全学必修化するだけでなく、応用基礎レベル、専門応用レベルにわたる体系的なカリキュラムを敷くに至った。科目が開講してからの履修動向は順調で、「学生たちの支持を一定程度得られていると見ている」と、竹内教授は語る。

