参加した学生の7割以上が「将来像が具体的になった」と回答
──全5回の実学セミナーを実施して、学生からはどのような反響がありましたか?
すべての回でアンケートをとったのですが、どの回も7~8割の参加者が「自分の将来像がより具体的になった」と回答してくれました。キャリアセンターが意図している目的はある程度達成できていると感じています。
特にデジタルマーケティングの回は学生の興味関心が高く、参加者も多かったです。もともとマーケティングに興味のある学生が参加してくれたのもありますし、今話題の生成AIに触れたいというニーズが多かったようです。
また、お金に関するセミナーは、投資や資産形成に興味がある学生が多いと思って企画したのですが、実際には「金融トラブルについて知っておきたい」という、リスク回避型の学生が多かった印象です。
──実学セミナーで得た内容が、すでに実際の就職活動に生かされている事例があれば教えてください。
就活において「求人票の見方が変わりました」といった声はよく聞きますね。例えば「固定残業代込み」が具体的にどういうものなのかを理解した上で判断できるようになったり、基本給と手当、それぞれがどこまで賞与の算定に関わるのか、企業に確認するようになったりといった声を耳にします。
──今後は、実学セミナーをどのように展開していく予定でしょうか。
参加した学生が楽しめる、双方向型のセミナーを目指していきたいですね。オンラインでも開催してほしいとの要望もあるのですが、講師が一方的に話すだけになってしまうことは避けたいと考えています。活発にインタラクティブなコミュニケーションできる場を作るため、意見交換の時間を設けるなど工夫していきたいですね。
さらに、今後新しく取り上げるテーマについても検討中です。例えば、入社後に先輩とうまく付き合っていくための処世術など、社会人としてのコミュニケーションスキルを学べるセミナーもできたらと考えています。また、営業職に就く学生のために、プレゼンテーションや交渉術といった内容も検討中です。
──実学セミナーを含め、大学のキャリアセンターとしてどのような支援のあり方を目指していらっしゃいますか。
「キャリアセンターが何をしてくれる場所なのかわからない」といった声は日ごろからよく聞いています。学生がキャリアセンターに相談しにくいと感じていることは大きな課題です。
まずは「なんとなく不安」といった相談でも構わないので、気軽に訪れてほしいと思います。私たちからは「頭の中が整理できていなくても、質問がまとまっていなくても、相談に来ていいですよ」と伝えてはいるものの、それでも高いハードルを感じてしまう学生はいます。
だからこそ、実学セミナーなどの小規模なセミナーを定期的に開き、学生との接触をなるべく増やすことが大切だと考えています。学生からすると、顔見知りの職員がいることで最初のハードルを越えやすいと思うんです。私たち職員も、学生の生の声を聴くことで困りごとに気づくことができます。
ただ、キャリアセンターからの発信だけでは届かない学生もいます。今後は教員も巻き込み、普段の授業で「こんなセミナーがあるよ」と勧めてもらえるとうれしいですね。あらゆるアプローチで、キャリアセンターが学生にとってより身近な存在になれたらいいなと思います。