通知表の所見文のたたき台を作る
「Google Gemini」(以下、Gemini)のAPI(Application Programming Interface、ソフトウェア同士が情報をやり取りする仕組み)を使って、「通知表の所見文のたたき台を生成するGoogleスプレッドシート」を作ってみました。APIを使わず、ChatGPTやGeminiで直接所見を作成することもできますが、何人もの所見をまとめて生成する場合はスプレッドシートで作業したほうが効率的です。
なお、このスプレッドシートは、青山学院の安藤昇先生によるYouTubeチャンネル「GIGAch」や、スクールエージェントの代表 田中善将先生による「G-Apps.jp Community」での動画セミナーで学んだことを生かして、ChatGPTで生成したGAS(Google Apps Script)を使っています。
Gemini APIキーを取得する
Geminiをフォームやスプレッドシートと組み合わせて使うには、自分のアカウントでGeminiのAPIキーを取得する必要があります。
まずAPIキー取得のページ(https://aistudio.google.com/app/apikey)を開き、Build with Geminiの画面で、「Get API Key」をクリックします。法的通知が表示されるので、熟読した上でチェックを入れて「続行」をクリックします。「API キーを作成」をクリックし、Safety Setting Reminderを熟読した上で「OK」をクリック、「新しいプロジェクトでAPIキーを作成」をクリックしてキーの生成を待ちます。しばらくするとAPIキーが生成されるので、コピーをクリックします。このAPIキーは、これから紹介するすべてのGASで共通して使用できるため、安全な場所に保存しておきましょう。くれぐれもほかの人へ流出しないように注意してください。
APIキーを取得したら以下のリンクをクリックし、私が作成したGAS付きのGoogleスプレッドシートをコピーします。
スプレッドシートを開いたら上メニューバーの「拡張機能」をクリックし、次に「Apps Script」をクリックします。さらに左サイドバーの歯車アイコン(プロジェクトの設定)をクリックして下にスクロールし、「スクリプトプロパティを追加」をクリック、プロパティに「GEMINI_API_KEY」、値に取得したAPIキーを入力してから「スクリプト プロパティを保存」をクリックします。
所見シートを開き、所見を記入したいセルに「=aisyoken(引数1,引数2,引数3,引数4)」の形式で関数を入力します。ここでは「=aisyoken(B2,C2,D2,E2)」と入力してEnterキーを押します。
A列の氏名は引数として指定しないため、個人情報がGeminiに送られることはありません。また、引数として指定する内容(B~D列のセル)の中に氏名等の個人情報を記入しないように注意してください。
セルに読み込み中と表示された後、しばらくすると所見の文案が表示されます。「=aisyoken」は関数として提供されているので、通常の関数と同じように数式をコピーして使用できます。全員分の項目を埋めてから一気に文案を生成することもできますが、人数が多すぎるとGeminiの制限を超えるためエラーが発生します。数人ずつ生成するとよいでしょう。
生成される所見の文体は「PromptSheet」のA1セルに記入したプロンプトに従って生成されます。この例では私がこれまで書いてきた所見と近い文体となるように設定しています。ぜひ自分好みの内容に変更したうえで試してみてください。プロンプトを変更しなくても、表の各項目に入力する内容を具体的に記入することでも、生成される文章が自分の好みに近くなります。
ここで重要な点は、提示されるのは、あくまでもたたき台に過ぎないということです。提示された文案をもとに、実際の子どもの実態に合わせて推敲し、書き直す必要があります。これがなければ、単なるチートで怠慢です。「それでは時短にならない」と思われる方がいるかもしれませんが、そんなことはありません。
私の場合、通知表の所見作成は作り始めるまでに時間がかかり、取り掛かると一気にやり終えてしまうことがほとんどでした。AI所見シートを使うと、作業に取り掛かるまでのハードルを一気に下げることができます。普段から子どもの様子を見取って記録しておけば、生成用表の項目はすぐに埋められます。そしてAIで一気に60点から70点程度のクオリティの所見を生成し、推敲しながら90点、100点の所見に練り上げていけばいいのです。それでもかなり時間は短縮されます。
普段から所見に苦労していない人であれば、このシートを使う必要はありません。しかし、少しでも所見作成に苦労している人は、ぜひ一度試してみてください。
なお、私のYouTubeチャンネルでは今回の事例を動画でも解説しています。こちらもぜひご覧ください。
次回は、実際に子どもたちに生成AIを使わせた事例について紹介します。