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特集記事(教職員の働き方改革)

人材不足が深刻化する中、教職員のメンタルを守るために取り組むべきことは何か

最も重要なのは「トップの理解」

 最後にお伝えしたいのは、メンタルヘルス対策を進める上で最も重要なことのひとつが「トップの理解」ということです。トップのメンタルヘルスに対する解像度の高さが問われています。

 私たちは自社サービスの展開の難しさに直面する際、「トップの理解不足」に悩むことが多々あります。ただし、比較的若い組織、40代以下が意思決定の中心となる組織では、メンバーのメンタルヘルスへの理解度が高く、重要性を認識し取り組む企業も増えています。特にIT企業では、エンジニアのメンタルヘルスは競争力維持のためにも重要な問題であり、積極的に対策を講じないと転職者が増え、企業の存続にも影響を与えるためです。

 「トップの理解不足」という壁は教育行政でも例外ではありません。文部科学省の理解は得られたものの、現場の教職員の声が届きにくい教育委員会が圧倒的に多かったのです。私は教育委員会における教職員のメンタルヘルス対策プロジェクトを行う数年前から、総務省の委託を受けて教職員のメンタルヘルスの研究チームに参加していましたが(2024年現在もチームの一員です)、理解のある教育委員会は数えるほどしかありませんでした。好事例集もいくつかまとめましたが、熱心な個人が推進する対策に留まっており、ほかの自治体や教育委員会が参考にしたり、取り入れたりすることができるように仕組み化されたものではありませんでした。

ITによる環境変化がメンタルにも影響を及ぼしている?

 また昨今、メンタル疾患が増えている理由として、特に高い年齢層では「若者が弱くなった」ことを挙げる人もいるようです。ですが、それは本当でしょうか。これは私の見解ですが「ITの進展により、世の中の変化のスピードが速くなっている」ことも大きな要因のひとつではないかと考えています。

 ITの進展は加速度的に進んでおり、例えば多くの人がスマートフォンを使っていますが、スマートフォン1時間で目に入る情報量は、20年前の1日分の仕事で得られる情報量と同程度と言われています。NHK放送文化研究所による2021年の「メディア利用時間調査」によると、スマートフォンの利用時間は「1日あたり平均1時間18分」という結果でした。これが意味するところは、脳の疲労度が世界的に高まっているのではないかということです。もちろん、対処できる人もいるのでしょうが、対処できない人が増えているのです。

 脳をパソコンに例える医師もいました。PCでExcelやWordなど、複数のアプリケーションを同時に使っているとPCがフリーズし、作業をやり直した経験を持つ方は一定数いると思います。私もその一人でした。脳も同じで、複数のアプリケーションを同時に動かしたり、ゴミデータの適切な処理が行われていなかったりすると、脳が疲弊してフリーズする、つまり適応障害や鬱を引き起こしやすくなると私は考えています。

 つまり、若者は弱くなっているわけでなく、脳がその変化に対応できなくなっているのです。脳は20年程度で進化するものではなく、メンタル疾患は環境変化によって「誰でもなり得るもの」という認識をトップを含めた組織全員で持っていただきたいと強く感じています。AIの進化も進む中、ITによる変化のスピードが止まることはないでしょう。だからこそ対処が必要なのです。

 なぜわれわれがここまでしてこの問題に取り組むのか。それは、日本の未来のためです。

 目の前で起きている教職員のメンタルヘルス問題の増加は、本来避けられるはずの問題に過ぎません。しかし、この問題は放置され続けて限界に達しつつあり、現場の教職員は悲鳴を上げています。

 これでは、子どもにとってよいはずがありません。私たちは、子どもこそ未来そのものであると信じています。

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この記事の著者

刀禰 真之介(株式会社メンタルヘルステクノロジーズ 代表取締役社長)(トネ シンノスケ)

 2002年明治大学経済学部卒業。デロイトトーマツコンサルティング、三菱UFJ証券、環境エネルギー投資などを経て、2011年にMiew(現メンタルヘルステクノロジーズ)を創業。2022年3月に東証マザーズ(現グロース)市場への上場。2022年8月には、全国の教職員のメンタルヘルスを守り、子どもたちの...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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