スタディプラスは、総務省の令和4年度「教育分野における情報信託機能の活用に係る調査」について成果報告レポートのとりまとめを行ったことを、5月22日に発表した。
総務省による令和4年度「教育分野における情報信託機能の活用に係る調査」は、情報銀行(利用者個人からの委任を受けてパーソナルデータの管理・提供を行う仕組み)を活用することで教育データの利活用を促進すべく、学習者個人を中心に学内・学外の教育データを統合し、学習者の個別最適な学びの実現や教育サービスの質の向上を目指した検証を実施する事業。
以下の、3つのユースケースを想定し、スタディログの提供に関する実証調査・机上調査を行っている。
- 学習者は、スタディログを提供することで、利用中の学校や民間教育機関から学習状況に応じて個別化された指導を受けることができる
- 学習者は、スタディログを提供することで、利用していない民間教育機関から学習状況に応じて個別化されたアドバイスを受けることができる
- 学習者は、属性情報やスタディログを提供することで、自分に関連度が高い情報を得ることができる
同実証では、「Studyplus for School」を6カ月以上利用し、スタディログを活用した指導を行っている学校・塾の教員(学校:17名、塾:7名)、および当該教員が指導を行っている生徒(学校:823名、塾:109名)にアンケート調査を実施。今後も、「Studyplus for School」を活用して生徒に学習指導を行いたいと思うかを尋ねたところ、「当てはまる」と「どちらかといえば当てはまる」を合わせた割合は、学校の教員が88%、塾の教員が100%、学校の生徒が77%、塾の生徒が96%と、ほとんどの教員・生徒が今後もスタディログを共有・活用する意向を示した。
同実証によって、学校・民間教育機関にとってのスタディログを活用する具体的なメリットとして、
- 学習者の学習内容・学習量・成績などの学習状況を把握することで、学習者それぞれの状況に応じた指導、アドバイスの個別化、指導頻度の向上を実現できる
- 「学習データを見ることで生徒とのコミュニケーションを取りやすくなる」「生徒の情報を関係する先生間で共有しやすくなり、生徒理解が促進される」など、教員・生徒間のコミュニケーションを改善し、間接的に指導の質・頻度の向上につながる
といったことが明らかになっている。
あわせて、以下のような課題も明らかになった。
- スタディログは学内・学外の各所に散逸しているという背景から、情報銀行にデータを一元化させるためには、各データの管理者にデータ連携のインセンティブがあることが必要
- 多くの学習は紙教材で行われており、スタディログを手動で作成することが、教員・先生双方の負担となっている
さらに、情報銀行認定制度(情報銀行認定申請ガイドブック)と、教育分野で定められている「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和4年3月)」「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和4年3月)」やユースケースを比較して、教育分野で情報信託機能を活用するために定めるべき制度や今後検証すべき課題を整理した。
おもな内容は以下の通り。
- 学生は未成年であり、情報銀行との間で、同意などの手続きに関する整理が必要。情報銀行利用中に、年齢の変化で法定代理人等から同意を得る必要がなくなった際の同意取得の対象変更に関する明文化を推奨
- 「情報銀行との間の同意等の手続き」を行った利用者にのみコントローラビリティを提供する必要があるが、既存の指針では機能を提供する相手に関する記載がないため、明文化が必要
- 教育機関や教育サービスの現状を踏まえると、情報銀行認定制度とは異なる形で、利用者の安心安全を担保するガバナンスの仕組みを整備するのが適当。対象の範囲や安全性の担保、提供すべき情報の区分など、さまざまな論点で今後検証が必要
同社では、「学ぶ喜びをすべての人へ」をミッションに掲げており、学習者1人ひとりが個性や特性を発揮できる、学習者中心の教育環境の実現を目指している。今回の実証事業は、家庭や学校、学習塾における「学びの記録」、学習eポータルやパーソナルスタディログ、学外教育データ基盤など「スタディログの同期」、学校や学習塾での「指導への活用」に該当しており、今後も官公庁をはじめとしたスタディログ利活用に関連する実証事業を続けていく。
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