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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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実践してわかった! オンライン授業のポイント【九州大学ビジネス・スクールでの事例】

対面授業よりも高い評価を得た「ハイフレックス型授業」のポイントとは?

実践してわかった! オンライン授業のポイント【九州大学ビジネス・スクールでの事例】第6回

 本連載では、筆者が所属する九州大学ビジネス・スクール(以下、QBS)および九州大学経済学研究院でのオンライン授業の実践をもとに、遠隔授業のポイントやコツを紹介します。今回は、オンラインおよびハイフレックス(ハイブリッド)型授業を約1年にわたって実践してきた中で、学生から寄せられたフィードバックを中心にお話しします。

学生からは対面授業よりも高評価

 幸いにして、僕がQBSで行ってきた授業は、学期末の授業アンケートで「かつての対面オンリーの授業よりも、むしろ学びの質が高い」といった評価を頂いています。その秘訣は何か。どのような工夫が学生から高く評価されているのか。オンライン・ハイフレックス型授業については、まだまだこれが正解と言えるような「型」は確立されていませんが、その中で学生が特に高く評価してくれている取り組みを少しでもお伝えできればと思います。

YouTube→Zoom→Slackのサイクルで「学びを止めない授業」

 まず前提として、僕の授業の立て付けを紹介します。

 学生は、授業前に講義で取り上げる内容を解説した学習用動画を視聴します。動画は僕がオリジナルで作成したもの(と言っても、後述する通り「Zoom」の「無観客試合」を録画しただけのシンプルなもの)で、1本あたり5分前後の短い動画を週に3~5本というのが典型的なパターンです。

 授業当日、学生は「教室での対面参加」と「遠隔オンライン参加」のいずれかを自由に選択できます。教室で対面参加する場合には、必ずノートPCとマイク付きイヤホンまたはヘッドセット(できればノイズキャンセリング機能付きのもの)を持参するようにお願いしています。教員である僕自身もヘッドセットを装着してZoomを開き、対面とオンラインを同時進行で授業を行います。

 授業後は、コミュニケーションツールの「Slack」を使って、学生と授業の内容に関する質問や意見を共有します。これによって、90分の授業時間内では取り上げられなかったトピックについても議論を深堀りすることができます。

YouTubeとZoom、Slackを活用した学習のサイクル
YouTubeとZoom、Slackを活用した学習のサイクル

Withコロナで生まれた大ヒット

 ここからは、こうした「学びを止めない授業」について、具体的にどのような準備や実践上の工夫をしているか、学生からはどのような反応が得られたかを紹介します。

 まず、授業前に教材動画を視聴する事前学習について。本連載で紹介した数々の取り組みの中でも学生からの評価が最も高かったのが、この「5分前後の短い動画を3~5本視聴して予習する」という事前学習の仕組みでした。

 「忙しいスケジュールの中でも、5分のスキマ時間があれば予習ができる」

 短い動画で事前学習をする仕組みに関する評価は、このコメントに集約されます。「思い立ったとき、すぐに『学び』のモードに頭を切り替えられるのがいい」という学生もいます。QBSの学生は、ほぼ全員が日中はフルタイムの仕事を持つ社会人学生であるため、時間を効率的に使える仕組みが重宝されている面はあると思いますが、社会人ではない一般的な学生や小中高生にとっても、好きな時間に自分なりのペースで学習できる動画学習は非常に有用なものだと思います。

 しかも、動画は予習だけではなく、復習にも活用できます(事実、僕の授業でもテスト前になると動画の視聴回数が増加します)。特に「YouTube」に動画をアップしておけば学生は自由に視聴スピードを変えられるので、一度見たことがある動画は1.5倍速や2倍速で再生することにより、さらに学習効率を高めることもできます。

 また、語学の面で負荷が大きい外国人学生にとっても、繰り返し視聴したり、分かりづらいところを巻き戻して再生したりできる動画学習は大きな助けとなります。僕の授業を履修した学生からは、「新型コロナが収束したあとも、動画による事前学習の仕組みは絶対に継続すべき」と念を押されるほど、高く評価されています。

 このように学生からは大好評の動画による事前学習ですが、教員研修などで紹介すると、懸念を含む反応に出会うことが少なくありません。最も多いのは「毎週いくつも動画をつくるのは、負担が大きすぎるのでは?」というものです。

 しかし、実際はそうでもありません。僕の場合は、自宅でZoomを1人で開き、実際の授業で使用するパワーポイントスライドを画面共有して「1人語り」しているところをZoomのレコーディング機能で録画するだけです。台本を書くこともなく、いつも授業で話しているときと同じペースでスライドの内容を説明します。言い間違えやペットの声が多少入ってもやり直しませんし、字幕・効果音を入れるといった編集も一切していません。結果、5分の動画であれば、だいたい7~8分もあれば作成できてしまいます。

 もちろん、パワーポイントスライドを作成する時間は別途必要ですが、いずれにせよ授業の準備段階で作成するため「事前学習用の動画を作成するための手間・時間」は「本当に大したことはない」というのが実感です。まとまった時間が30~40分あれば、つまり、ちょっと早めにランチを切り上げれば、昼休みの時間中に1週間分の動画3~5本は十分つくれます。もし自宅や研究室にホワイトボードが置けるのであれば「とある男が授業をしてみた」で有名なYouTuberの葉一氏のようにホワイトボードの前にカメラを設置して、板書をしながら講義する様子を録画してもいいと思います。

 ポイントは、動画の編集に凝りすぎないこと。録画ファイルを動画編集ソフトに取り込んで字幕を付け、効果音や画面遷移を設定して……と手間をかけ始めると、どこまでも凝ることができるので、いくら時間があっても足りません。一方で、何十万回も再生されるような大ヒット動画をつくろうとするYouTuberではない教員が、自分が受け持つ学生向けにつくる「業務用」の動画に手間ひまかけた編集を施しても、個人的にはそこまでの費用対効果はないのではないかと思います。

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対面とオンライン同時進行のコツは「万能主義」を捨てること

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この記事の著者

松永 正樹(九州大学ビジネス・スクール准教授)(マツナガ マサキ)

 Ph.D. in Communication Arts & sciences(Pennsylvania State University, U.S.A.)。早稲田大学、立教大学で助教を務めた後、Institution for a Global Society株式会社シニアコンサルタント、九州大学ロ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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