はじめに
昨年より文部科学省は1人1台の学習用端末を整備するための仕様として5万円程度の端末を供給するようメーカー側に要請を行ってきました。昨年末には「GIGAスクール構想」が打ち出され、端末の標準仕様書も公開するとともに、補正予算で端末1台当たり最大4.5万円の補助(公立・国立の小中の場合)が出ることも決定されました。
5万円端末は、現在PCルームにあるような据え置き型のパソコンではなくモバイル端末となります(9~14インチ、詳細は標準仕様書を参照してください)。また、OSには「Microsoft Windows 10 Pro」「iPadOS」「Google Chrome OS」が仕様として挙げられています。
2022年には高校の「情報Ⅰ」でプログラミング教育が本格的にスタートしますが、そこで使われる端末も標準仕様に近いものが選定されることが想定されます。そこで、標準仕様書にあるような5万円程度の端末を使って「情報Ⅰ」で想定されているようなプログラミング学習が可能なのかを検証してみたいと思います。現時点では「情報Ⅰ」の教科書はまだ発売されていないため、今回は文部科学省が「情報Ⅰ」に向けて用意した研修教材を使って検証を行います。
検証に使用した端末と仕様
今回は標準仕様のスペックをギリギリ満たすか若干下回る機種を使って検証を行いました。各端末の主な仕様は以下のとおりです。
OS | Microsoft Windows端末 | iPad OS端末 | Google Chrome OS端末 |
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機種名 | Surface Go | iPad(第6世代) | Chromebook Flip C101PA |
CPU | インテル Pentium Gold Processor 4415Y | Apple A10 Fusion | OP1 Hexa-core 2GHz |
ストレージ | eMMCドライブ:64GB | 32GB | 16GB |
メモリ | 4GB | 2GB | 4GB |
ディスプレイ | 10インチ(1800×1200) | 9.7インチ(1536×2048) | 10.1インチ WXGA(1280×800) |
ブラウザ | Microsoft Edge (Chromium版) | Safari | Google Chrome |
備考 | 初代Surface Goのwifiモデル。 | 今回試用したiPad(第6世代)は画面が9.7インチですが、標準仕様では10.2インチ以上を推奨しています。 | この端末のストレージ16GBですが、標準仕様ではChrome OSの場合ストレージ32GB以上を推奨しています。 |
検証を行ったプログラミング言語とプログラミング環境
高等学校情報科「情報Ⅰ」教員研修用教材ではプログラミングは第3章で扱われています。プログラミング言語としては、JavaScript/Python/ドリトル/VBA/Swiftの5つの言語が示されています。そこで、今回は現行の指導要領下で教科書にも掲載されており高校での実績が豊富なJavaScript言語と、近年AI分野での注目が高まっているPython言語の2つを取り上げて検証しました。また、プログラミング環境としては各OSで共通して利用できることを条件に今回はクラウド型のプログラミング環境である「Monaca」「Bit Arrow」「Microsoft MakeCode」を使いました。
「Monaca」は、JavaScriptによるプログラミングを行えるクラウドサービスです。作成したプログラムをスマホやタブレットで動作させることもでき、和歌山県「きのくにICT教育」など、広く教育機関で使われています。
「Bit Arrow」は、Python/JavaScript/ドリトル/簡易C/DNCL(どんくり)といった複数のプログラミング言語に対応した教育用のクラウドサービスです。
「Microsoft MakeCode」は、ブロックを使ったビジュアルコーディングとJavaScriptによるテキストコーディングの2種類のエディタを切り替えながらプログラミングができるクラウドサービスです。micro:bit向けのプログラミングを行うことができます。
高等学校情報科「情報Ⅰ」教員研修用教材
同教材「3章 コンピュータとプログラミング」の各学習項目の中からプログラミング学習の各端末での動作検証を行うという目的に沿った、いくつかの学習項目を選択して検証を行いました。
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学習11 コンピュータの仕組み
- コンピュータの構成要素や論理演算、計算誤差などについて学習します。
- 特別な動作検証は不要と判断し、今回の検証は省略しました。
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学習12 外部装置との接続
- 中学校技術・家庭科技術分野との接続の一環として、コンピュータによる計測と制御を学習します。
- 同教材で提供されているmicro:bitを利用した場合のコードと、MicrosoftのMakeCodeを使って各端末での動作検証を行いました。
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学習13 基本的プログラム
- 順次・分岐・反復の制御構造について学習します。
- 特別な動作検証は不要と判断し、今回の検証は省略しました。
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学習14 応用的プログラム
- 配列・乱数などの関数を用いたり、独自の関数を定義する方法を学びます。また、Web APIを利用したプログラムについても学習します。
- 本学習項目からはWeb APIの呼び出しについて各端末での動作検証を行いました。
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学習15 アルゴリズムの比較
- 探索アルゴリズムとソートアルゴリズムの中から代表的なものを学習します。
- 特別な動作検証は不要と判断し、今回の検証は省略しました。
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学習16 確定モデルと確率モデル
- 預金の複利計算やモンテカルロ法による円周率のシミュレーションを学習します。
- 本学習項目からは預金の複利計算をシミュレーションしグラフ表示について各端末での動作検証を行いました。
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学習17 自然現象のモデル化とシミュレーション
- 物体の放物運動のモデル化など、いくつかの自然現象のモデル化とシミュレーションを行います。
- 学習16と同様の環境で学習が可能なため、今回の検証は省略しました。