2月17日、デジタルハリウッド株式会社が展開する教育活性化サービス「デジタルハリウッドアカデミー」にて大学の教員を対象としたセミナーが開催された。同校准教授であり専任講師を務める栗谷幸助氏が登壇し、クリエイティブ業界の内情やスキルの在り方などについて講演を行った。
未来のクリエイティブ業界がますます魅力的になる3つの理由
社会変革とともに、社会で求められるスキルが大きく変化しつつある。特にクリエイティブ業界を志す学生は、多様化するソフトウェアへの対応やVRやAIといった最先端の知識への関心は高いが、長期的な視点では、問題解決力やクリエイティビティなどの、普遍的なスキルや能力の習熟こそが重要といった見方もできる。
そうした「クリエイティブ業界」の変化を、Webデザインを専門としてデジタルハリウッドで講師を務める栗谷幸助氏は長らく体感し続けてきた。そして、ICTツールを用いた反転教育の手法や可能性を模索する教育者グループ「iTeachers Academy」の理事も務める中で、これからの学びの在り方についてさまざまな思案・議論を繰り返してきたという。
そんな栗谷氏は、クリエイティブ業界について「今後ますます魅力が高まる」と評する。その根拠とするのが次の3つの事象だ。
まず1点目が「人材が求められていること」。2030年には労働市場で約644万人の人手不足が予測されている(※1)。特にクリエイティブ職は全業界で必要とされると考えられる。そして、インターネットは今以上に活用され、国民の8割以上がその恩恵を享受する状況は保たれると予測されている(※2)。利用が増え続ける中で、圧倒的に作り手が不足することは明白と言えるだろう。
2点目は「これまでの経験が役に立つこと」。2017年、個人がインターネットを利用する際の機器において、スマートフォンがPCを逆転。Webサイトには新たな対応が求められた。ほかにもタブレットやテレビ、ゲーム機などさまざまな機器がインターネットにつながり、閲覧環境が増えれば増えるほど発信側も変化する必要がある。また利用目的もSNSやアプリのほか、eラーニングなど多様になっていくことが予想される。
「WebデザイナーがWebサイトを設計する人であり、『情報を伝えるためのツール』の設計者だとすれば、『コンピューターに詳しいこと』以上に、『利用状況をイメージできる力』や『届けるコンテンツへの理解力があること』が重要となる。それはWebサイトに限らずデザイン全般に言えることであり、経験したこと全てが活かせるだろう」と栗谷氏は語る。
そして3点目が「いろいろな働き方があること」だ。Web制作の現場では、さまざまな職能を持つスタッフが協力し合っている。企画や情報設計に始まり、デザインやコーディング、運用や分析など多種多様な職種があり、たくさんのキャリアパスが存在する。また、アナリストやグロースハッカーといった新しい職種も登場している。つまり、デザイナーだとしても単に「作れる」だけでなく、多角的な視点からWebサイトの価値を高めていく能力が求められているのだ。さらにどのポジションでもクリエイティブの知識は大いに役立つ。さまざまな役割分担やスキルの使い方があり、学生の個性や指向性によって多彩なキャリアを案内することができるというわけだ。