登壇者
学研スタディエG-ALCS(アルクス) 小川武志氏
埼玉県にある自立学習型の塾を運営、導入している教材は「ウイングネット」。
学習塾ユニバースクール 代表 湯浅浩章氏
神奈川県にある自立学習塾2校を管理、「ベリタス・アカデミー」「学びエイド」「atama+」「LoqLog」ほか、多数のEdTechツールを導入。
国大Qゼミ 宮田大輔氏
神奈川県にある集団・個別指導塾にて二俣川校を管理、導入している教材は「代ゼミサテライン予備校」。
進学塾 MUGEN 小牧千穂氏
鹿児島県にある自立指導型塾を運営、導入している教材は「ウイングネット」「学びエイド」「atama+」ほか、多数EdTechツールを導入。
モデレーター
スタディプラス株式会社 取締役COO 宮坂直
EdTechツールは導入する「だけ」では活用し切れない
――「Studyplus for School」に限らず、皆さまがどのようにEdTechツールを利用されているか伺います。まず、EdTechツール導入の背景についてお教えいただけますでしょうか。
小川:当社は、元々は小中学生をメインに集団指導を行う学習塾でした。高校生への指導は、教えられる先生がいる校舎では実施していました。生徒が高校2年生になったら、「そろそろ受験だから」と予備校に通うことを促していました。
8~9年前に映像授業「ウイングネット」を導入しましたが、当時は映像授業が出始めたころで、どう使うかもよくわからず、導入すれば何か変わるのではないかと期待しました。しかし、ただ導入しただけでは何も起きるわけなどなく、ほとんどの校舎でうまく活用できませんでした。
これはまずいなと、中途半端な利用から脱却するべく、私たちの塾の講師による授業を一切廃止して映像授業のみに切り替えました。5年ほど前のことです。これがEdTechツール導入、活用の第1弾ですね。現在、私は大学受験専門の校舎を2校運営していますが、EdTechツールがないと校舎運営ができないくらいの存在になっています。
――ウイングネット活用の課題は何でしたか?
小川:導入しただけでは、何も起こらない……ということですね。私が管轄している校舎について具体的にお話しすると、あくまで映像授業は教材でテキストと同じであり、使い方をこちらから生徒に提案する必要があると考えています。「オンデマンドでいつでも見ることができる」「生徒のニーズに合わせて授業を組み立てることができる」これは映像授業の大きなメリットですが、活用の落とし穴でもあります。
というのも、生徒は大学受験の経験がないので、何をどう勉強すればいいかわからないんですよね。だから塾に来てるのであって、そこで生徒に「どうしたい?」と聞いても何も出てきません。私たち塾側が「何をいつどのくらい勉強するか」を組み立てるようにすると、映像授業を活用できるようになりました。
湯浅:私たちも、最初は小中学生メインの塾運営でした。高等部は生徒からリクエストがあれば対応していましたが、学研スタディエG-ALCSさんと同じように大学受験目前になったら予備校に行くことを薦めていました。
EdTechツールを導入するきっかけは、高校生の科目を全て教えられる講師がいなかったこと、つまり、人手不足ですね。また、部活やアルバイト、遊びなど……とにかく高校生は忙しくて、特に高校1~2年生は勉強にかけるウェイトがかなり少ないと感じていました。だからこそ、生徒たちが効率的に勉強をする仕組みを作る必要があると考え、最初に映像授業の「ベリタス・アカデミー」を導入しました。
導入当初は映像授業を見せっぱなしにしてしまっていたんですよね。「映像授業があればなんとかなるだろう」と考えて、生徒とのコミュニケーションをおろそかにしてしまいました。その結果、1年で約10人の退塾が発生してしまいました。
この反省を踏まえて、見せっぱなしではなく、生徒とのコミュニケーションを重視しつつ、かつ効率的な塾運営をしようと考えました。
そこで、Studyplus for Schoolを導入して、そこから現在の高等部の塾運営を構築しました。今年4月からは、大学受験専門の塾をオープンするまでになりました。現在、数種類のEdTechツールを使っていますが、Studyplus for Schoolがベースにあるからこそ運営できていると思います。
そのほかのEdTechツールとしては、ベリタス・アカデミーを講義型の授業として活用しています。ライブ授業の内容を映像授業に置き換えるためです。また、同じく映像授業の「学びエイド」を「持ち歩く辞書」として活用しています。テスト対策でよく利用され、生徒はわからないことを調べるために使っているようです。
また、EdTechツールを導入する際には、スタッフで私たちの塾に足りないことを話し合って、解決策に一番近いサービスを選びます。まずは、アプリやサービス・ツールを生徒になったつもりで触って、自分たちが楽しい・ワクワクすると感じたものを導入しています。
宮田:私たちも小中学生メインの学習塾で、大学受験コースは20年以上前から「代ゼミサテライン予備校」を導入しています。導入当初は、大手予備校が提供する質の高い大学受験の授業を、生徒の自宅の近くの塾で提供できることが強みでした。
それから時代は変わって、授業だけでは生徒を集められないという課題にぶつかりました。そこでまず、チューターの活性化に取り組みました。学生チューターが、校舎の運営や生徒対応をしっかりできるようにマニュアルや研修を充実させました。そのタイミングで、映像授業を活用しつつ、生徒が「先生たちは面倒を見てくれている」と実感してもらうにはどうすればいいかということも考えました。
小牧:私たちの場合は、何か課題があってEdTechツールを導入したということではなく、「生徒たちにいかに主体的・能動的な行動を促すか?」といった目的があり、そのためにEdTechツールを導入しました。紙媒体やタブレット、黒板でも、生徒が自主的に勉強したいと思えるものならば、こだわりはありませんでしたね。
また、私たちはEdTechツールを子どもたちが上達するためのツールとして考えています。というのも、英語をネイティブレベルで発音する先生や、「atama+」のように生徒一人ひとりの苦手分野を指摘してくれるような先生を、EdTechツールと同じくらいのコストで全教室に配置することはなかなか難しいからです。その代替としてのEdTechツールと考えています。
――EdTechツール活用の課題はありますか?
小牧:主体的・能動的に生徒たちに学んでもらうための課題と考えると……ツールを導入するだけして、先生が生徒を放っておいてしまうと、生徒は途端に興味関心を失います。彼らがくじけたときにどう勇気づけるか、どう励ますかということが、EdTechツール活用の鍵だと考えています。
――ツール活用だけではなく、生徒との対面でのコミュニケーションも必要不可欠ということですね。