なぜ学校で生成AIの活用が必要とされるのか
私
でも一郎先生、そもそも学校で生成AIを使う必要ってあるんでしょうか? 授業や校務って、別に今まで通りでも回ってますよね
一郎
確かに「今まで通り」でも日々は進んでいく。でも社会を見渡すと、もうAIを前提とした働き方に変わり始めているんだ。例えば最近の調査では、企業の41.2%が言語系生成AIをすでに導入済み、あるいは導入準備中という結果が出ている。その前の年は26.9%だから、相当な伸び率だよね[※1]。今や半分近くの企業が「使ってみよう・試してみよう」という段階に入っているんだよ
一郎
さらに、民間の分析では、就業者全体のうち20%前後が生成AIによる「協働」や「代替」の影響を受ける可能性があるとも言われている[※2]。すべての仕事が一気に置き換わるわけじゃないけれど、仕事のやり方は確実に変わる、という見立てだね
私
単に便利だから広がっているんじゃなくて、社会の仕組みそのものを支えるために導入されているんですね
一郎
その通り。そしてAIを取り入れた職場では、「反復作業が減って、より複雑な課題に取り組む時間が増える」という変化が報告されている[※3]。つまり、AIは仕事を奪う存在じゃなくて、「人間の仕事の中身を変えていく存在」でもあるんだ
私
そう聞くと、子どもたちが将来社会に出たとき、AIと一緒に仕事をするのが当たり前になっている気がしますね
一郎
まさにそこがポイント。だから学校は「AIを禁止する場所」じゃなくて、「AIとどう付き合うかを学ぶ場所」になるべきなんだ。文部科学省のガイドラインでも、「人間中心」「情報活用能力の育成」「安全性やプライバシーへの配慮」が柱として示されている。禁止ではなく、正しく学ぶことを前提にしているんだよ
私
なるほど……社会の流れを考えると、学校で取り上げないわけにはいかないですね
まずは校務から始めよう
私
実際に使ってみるときに、覚えておいたほうがいいことはありますか?
一郎
そうだね。いきなり授業で使うのではなく、まずは校務で教員が生成AIを体験し、便利な道具として使うことができるという実感を持ったほうがいいと思う
私
なるほど。「まずは校務で使ってみる」ということですね。ほかにはありますか?
一郎
そうだね。生成AIについては現状、プロンプトをどう書くかによって出力が異なってくるから、基本的なプロンプトの書き方を覚えておくといいね
私
「プロンプト」ですか……よく聞きますけど、具体的に何のことなんですか?
一郎
いい質問だね。プロンプトというのは、生成AIへの指示文のこと。AIに「何を、どんな形で出してほしいか」を伝える文章なんだ。人間でいえば「依頼書」や「お願いメモ」みたいなものだね
私
なるほど。つまり、こちらが「どう頼むか」で結果も変わるわけですね
一郎
その通り。結果の質は「どう頼むか」で大きく変わると言われている。だから最近は「プロンプト・リテラシー」という言葉も使われるようになってきた。これは「AIに上手に頼む力」のこと。難しい技術ではなく、誰でも身につけられるAI時代の新しい基本スキルなんだ
私
「プロンプト・エンジニアリング」という言葉も聞きますが、それとは違うんですか?
一郎
いいところに気づいたね。プロンプト・エンジニアリングは、AIの仕組みを理解して出力を精密に制御する技術者向けのスキル。一方、プロンプト・リテラシーは教員や子どもたちが日常的にAIと関わるための「頼み方の基礎教養」なんだ。教育現場でまず必要なのは、もちろんリテラシーのほうだよ
私
つまり、私たちがAIを正しく使うための「言葉の使い方」を学ぶということですね
一郎
そう。そして、その学びを助けてくれるのが、Google for Educationが提案している「PARTSフレームワーク」[※4]なんだ。これは、どんな生成AIにも共通して使えるフレームワークだよ