「ブラック職場」と言われる学校教員の実態とは?
文部科学省が発表した「令和5年度公立学校教員採用選考試験の実施状況」によると、公立学校全体の競争率は3.4倍(前年度3.7倍)で過去最低となっています。小学校だけを見ても2.3倍(同2.5倍)と、同じく過去最低の競争率です。教員の不人気に歯止めがかからないことに加えて、新人教員の離職率が高まっていることも深刻な問題となっています。
採用試験の受験者数の回復に向けて、文部科学省の諮問機関である中央教育審議会は総合的な対策を答申しました[※]。
答申では、学級担任の手当加算などの「待遇改善」や、残業時間の削減などの「働き方改革」が挙げられています。もちろん、こうした取り組みは教員の確保・定着につながるものと考えられますが、「教育の質向上」や「教職の魅力向上」にまでつながるかどうかは疑問が残ります。
[※]出典:文部科学省「「「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(答申)」(令和6年8月27日中央教育審議会)を踏まえた取組の徹底等について(通知)」2024年9月30日
企業と学校、両方のキャリアを経験した人のリアルな声
筆者は、企業の人事担当者と学校教員が交流する「HRC教育ラボ」というコミュニティを運営しています。HRC教育ラボを立ち上げて4年ほどが経ちますが、これまでの活動から手応えを感じているのは、企業の人事課題と学校の人事課題には共通点が多いということです。だからこそ、情報を交換し学び合うことで、解決に向けた糸口が見つかるのではないかと感じています。
「HRC教育ラボ」について
リンクアンドモチベーションが主催する、大手企業向けHRコミュニティ「Human Resource Committee」から派生した、「教育」をテーマに研究をしている団体。
「初等教育から続く一気通貫した教育システムづくり」を目的とし、学校教育と企業教育の垣根を越えた交流を行っている。メンバーは、小中高等学校教諭(校長・教頭を含む)、フリースクール教員、大学教授、文部科学省職員、企業のHR領域従事者などさまざまであり、それぞれの知見や課題感を共有し、よりよい日本教育の実現を目指す。
HRC教育ラボには、企業と学校、両方のキャリアを経験している人が数名所属していますが、その人たちからは次のような声が聞かれます。
企業の場合、成果を出せば評価されるが、学校は成果が見えにくいがゆえに、「労働時間の長さ」のみに教員の目が向きがちになってしまう。その分、仕事ができる人や仕事を断れない人に負担がかかり、公平感や納得感が失われてしまう。
子どもの成長が見えることは教員ならではのやりがいだが、人によってやりがいの感じ方はさまざまであるため、働く情熱を持てない人もいる。
教員はほとんどの時間、子どもたちと接し続けており、1人で集中して教材研究や授業準備を行う時間を確保しにくい。
こうしたリアルな声からは、教員ならではの苦悩やストレスが伺えます。