武蔵野美術大学の学長である樺山祐和氏は、同学の学生に対して、ChatGPTをはじめとした生成系人工知能(生成AI)を巡る現状と課題についての、同学としての見解を5月11日に発表した。
武蔵野美術大学としての、生成AIを巡る現状と課題は、以下の通り。
- 身近なツールとなってきた生成AIを、まずは自分の目で確かめてみよう。
- 生成AIの問題や可能性についてより深く考えていこう。
- 個人情報や機密情報、また悪意のある内容の入力は絶対にしてはいけません。
- レポートや論文に、生成AIの回答をそのまま用いて提出することを禁止します。
- 生成AIを引用するときは出典として明記してください。
- 生成AIの回答をそのまま「自分の作品(自作)」として提出することを禁止します。
具体的には、生成AIを一律に禁止するわけではなく、制作者、研究者という立場で生成AIを自分で試して、自身の目で確かめることを勧めるとともに、現在の生成AIは機能的にはまだ不十分な点が数多くあることから、「人工知能が出した答えを完璧だと思う」ことを戒めている。また、生成AIを取り巻く環境が数週間単位で変化していることを受けて、その現状を日々注視していくよう学生に求めた。
ChatGPTの利用を禁止しない理由としては、今後は目に見える形だけではなくあらゆるものに人工知能が組み込まれることが予測され、単にChatGPTの使用を禁止したところで生成AIの使用を禁止することにはならない、という点を挙げている。
さらに、生成AIに対する人々の認識や、法整備が追いついていない現状を挙げ、生成AIが作成したものの著作権がどこにあるのかについても、人々の認識や法律的にまだ明確になっていないことを指摘し、生成AIにおける著作権に関する世の中の動向を注視していくことを求めた。あわせて、プロの制作者として自分の作品を世の中に出す場合、世に出す側には「先に類似の意匠や商標がないか」を調べる責任があり、そのリサーチは必ず自分で行う責任があることを訴えている。
あわせて、生成AIの利用にあたっては、個人情報や機密情報といった公開されてはいけない情報は絶対に入力しないこと、他者から見て悪意のある利用になっていないか、他者に悪意ある利用をされたときに危険な情報共有にならないか、弱者の抑圧につながらないかなど柔軟な想像力を持って接する必要があること、ヘイトスピーチや差別など、一般社会で有害と考えられている言論は入力しないこと、危険物の製造法など人に危害を与える道具になりうるものの知識を入力することを慎むことを求めた。
一方で、美術大学で学ぶ「美術」や「デザイン」という分野は世の中に新しいものや考え方を提示していくという立場にあることから、研究・制作対象として生成AIを積極的に扱うべき、という姿勢を取っている。ただし、レポートや論文などの作成において生成AIの回答をそのままコピー&ペーストして提出すること、生成AIの回答をそのまま「自分の作品(自作)」として提出することを、禁止事項として定めた。
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