はじめに──社会課題について自分の考えを持つ
われわれが現代社会を生きていく上で、さまざまな社会課題や問題に直面し、日々の生活の中で影響を受けています。例えば、少子高齢化、過疎化、脱炭素などのエネルギー問題等々、たくさんの課題が山積みです。これらの課題を解決していくには、既存の知識だけでは対応しにくくなってきています。目の前の課題に応じた工夫を講じ、状況に応じた判断が求められます。そんな課題を解決するための素地を培っていくのが社会科であると私は考えます。
この授業では、社会保障制度の概要について、ICTを活用しながら考えを深めます。さらに、社会保障制度のこれからのあり方について、パフォーマンス課題をもとに自らの考えを練り上げ、まとめ上げます。私たちの生活に密接に関わるテーマについて、どのように考えを深めることができるのか。ぜひ、実践をご紹介できたらと思います。
学習指導要領をもとにICTの活用について考える
ここ数年、ICTを活用すること自体は真新しいことではなくなりました。1人1台端末の普及がほぼ完了したからこそ、新たな活用のされ方が模索されています。以前は「どのように使用するか」というように、導入することが先決でした。しかし、これからの時代は「文房具」としての活用です。使うことが特別なものでなく「当たり前」に活用するための手立てを講じていくことが求められています。
そこで、導入の拠り所となるのが、学習指導要領です。「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総則編」によると、情報活用能力とは「世の中の様々な事象を情報とその結び付きとして捉え、情報及び情報技術を適切かつ効果的に活用して、問題を発見・解決したり自分の考えを形成したりしていくために必要な資質・能力である」と記されています。また、情報活用能力を具体的に捉えると、「学習活動において必要に応じてコンピュータ等の情報手段を適切に用いて情報を得たり、情報を整理・比較したり、得られた情報を分かりやすく発信・伝達したり、必要に応じて保存・共有したりといったことができる力」ともあります。情報化の進展により、ますます社会は変化し続けています。絶えず情報が更新されていく世の中だからこそ、自ら必要な情報を取捨選択するための情報活用能力が強く求められています。
これまでの教育現場では基礎的な知識や技能を習得し、決められた情報をアウトプットできることが重要視されていました。しかし、これからは学んだ知識をもとに、課題解決に向けて再構成し、練り上げ、他者へ発信・伝達する力が求められます。情報活用能力を発揮して教科の学習に取り組むことにより、各教科の特性に応じた見方・考え方をはたらかせることにつながったり、求められる資質・能力の向上につながったりするのではないでしょうか。この記事では「社会保障制度」という現代社会の課題について、ICTを効果的に活用することとあわせて、紹介したいと思います。