日本で「データリテラシーに自信がある」と回答した人は世界平均の半分以下
──まずは自己紹介と、北海道ハイテクノロジー専門学校でデータリテラシー教育に関わることになった背景を教えてください。
横尾聡です。学研ホールディングスに所属し、学研グループ全体のマーケティング支援に従事しています。かつてはIT企業や事業会社でさまざまな職種を経験しました。IT企業在籍時にはデータ活用コンサルタントをしていたこともあります。
北海道ハイテクノロジー専門学校でデータリテラシー教育に携わることになったのは、医療情報の学科においてデータ分析についてのカリキュラムを作りたいとご相談いただいたことがきっかけでした。テキストの編集から取り組み、先生や学生の反応を通じて痛感したのは「データリテラシーを学ぶには専門学校からでは遅い」ということです。
加えて現状の企業を見渡しても、所属する社員のデータリテラシーはまだまだ低いと言わざるを得ません。データリテラシー教育をするのであれば、早い段階から取り組む必要があると考えています。
──データリテラシーの低さというのはどのようなところで見受けられますか?
日本企業には「レポート文化」があります。古い言い方だと帳票です。定型的なレポートだけでビジネスを判断する文化が根付いていて、定型的な見方に偏ってしまいます。視点を変えてデータを見る、そして活用するといった発想を持つことができていません。
──グローバルで実施した調査[※1]によると「自分はデータリテラシーに自信がある」と答えた人は世界平均が21%でしたが、日本は半分以下の9%でした。
今でこそ「データ活用はビジネスに不可欠」と経営層も考えるようになりましたが、グローバルで比較するとデータ活用のスキルに自信を持てる人は少ない状況です。
──先のレポート文化では、合計や決まった集計結果を見て「終わり」で、多角的に分析してインサイトを得て、深掘りすることは求められていないですね。よく日本では「KKD:勘と経験と度胸」と言われます。
ご指摘の通りです。私が講師として2022年の夏に実施した、小学生向けのワークショップ(編集部注:後半で詳述)で実際に教材に使っていた素材を例に説明しましょう。
この教材では水産庁が出している海面漁業漁獲量の推移を用いており、それぞれ表とグラフで表しています。グラフのほうが一目瞭然で、数秒でインサイト(洞察、発見)が得られます。マイワシが急速に伸びているとか、サバは2018年から下降しているとか、すぐに判断できます。
しかし表の数字だけを長々と見ていてもわかりません。日本はこのような表の数字だけを見ることに慣れてしまっています。数字を追いながら何が起きているのかを知るには時間がかかるのです。これでは膨大な時間を無駄にしているとも言わざるを得ません。多くの人にはグラフで見るという習慣がないのです。
──グラフにすることで「ここが伸びている」などと、インサイトを得ることができれば「では次に○○をしよう」とアクションにつなげられますよね。ビジネスでも数字やデータに基づいて行動することが重要で、常にこうした点を意識することが大事なのではないでしょうか。
おっしゃる通りです。表を見るだけで満足してしまいグラフ化(視覚化)しない、視覚化してインサイトを得るという習慣がないことがまず課題として挙げられるでしょう。
[※1]Qlik「データリテラシーによる人への影響 データの民主化、生産性の向上、および労働力の強化を図るためのリーダ向けガイド レポート2020」P.5、P.7より