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新科目「総合的な探究の時間」どう設計する? 導入の課題とヒント

2022年度から始まる新科目「総合的な探究の時間」はどのように導入するべきか?

新科目「総合的な探究の時間」どう設計する? 導入の課題とヒント 第1回

 高等学校の「総合的な学習の時間」が、学習指導要領の改訂により2022年度から「総合的な探究の時間」に変わります。多くの学校は来年度に向けて、カリキュラムの検討の段階にあるでしょう。新科目は、従来の内容とどう異なるのでしょうか。また、探究学習を行うことで生徒たちのどんな力を伸ばすことができるのでしょうか。本連載では、「総合的な探究の時間」がなぜ今必要とされているのかをひも解き、実際に授業を行うにあたっての現場の課題とポイントを明らかにしていきます。

2022年度から高校で「総合的な探究の時間」が始まる

 現代社会は、VUCAの時代と呼ばれ変化の激しい社会と言われています。VUCAとは、Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字をあわせた造語で、現代社会が困難でかつ予測不可能な時代に直面していることを表す言葉です。

 こうした社会において、自らの意思で進路選択を行えるような、社会で生き抜くために必要な資質や能力を育成することの重要性が高まっています。また、自己の在り方・生き方と学習との結びつきを通じて、教科学習への意欲を高める必要があるとも考えられています。

 そこで、文部科学省は2022年より高校で「総合的な探究の時間」を新たに実施することを決め、社会で求められる力=「生きる力」の育成を求めています。

 本連載では、「総合的な探究の時間」がなぜ今必要とされているのかを主軸に、2019年12月にEdTech企業であるEdv Future株式会社を創業し、膨大な学生データを活用してて探究学習に関する研究と教材開発を行っている私が、30校以上の高校訪問を通して分かったこと、「総合的な探究の時間」で何をテーマに生徒の力を育成すべきか、探究学習の内容の策定について悩んでいる現場の方へ実情をご紹介します。

新設「総合的な探究」と旧科目「総合的な学習の時間」の違い

 2022年度より、高等学校で実施される科目の1つ「総合的な探究の時間」とはどのような科目なのでしょうか。探究学習を深めることで教科学習にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか。また、旧科目にあたる「総合的な学習の時間」とは一体何が違うのでしょうか。

 改めて、平成21年3月の高等学校学習指導要領を見てみると、以下のように明記されています。

総合的な学習の時間

 第1目標

 横断的・総合的な学習や探究的な学習を通して,自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育成するとともに,学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的,協同的に取り組む態度を育て,自己の在り方生き方を考えることができるようにする。

 ※引用:文部科学省「高等学校学習指導要領(平成21年)

 つまり、旧科目の「総合的な学習の時間」とは、総合的な学習を通して、課題解決能力や主体的な学びを育む授業でした。しかし、学校教育において重要視されている「教科学習」との関連付けがされていないほか、各学校の自由な裁量に任されたために、本来の目的を果たせないことが多いという問題がありました。そのため、この度の学習指導要領改訂を機に、改めて、この授業の意義を考えるべく、授業名を変更して新科目では「総合的な探究の時間」としました。

 新学習指導要領では、「総合的な探究の時間」に関して以下のように明記されています。

総合的な探究の時間

 第1 目 標

 探究の見方・考え方を働かせ,横断的・総合的な学習を行うことを通して,自己の在り方生き方を考えながら,よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

  1. 探究の過程において,課題の発見と解決に必要な知識及び技能を身に付け,課題に関わる概念を形成し,探究の意義や価値を理解するようにする。
  2. 実社会や実生活と自己との関わりから問いを見いだし,自分で課題を立て,情報を集め、整理・分析して,まとめ・表現することができるようにする。
  3. 探究に主体的・協働的に取り組むとともに,互いのよさを生かしながら,新たな価値を創造し,よりよい社会を実現しようとする態度を養う。

 ※引用:文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年)

 2022年度から実施される「総合的な探究の時間」は、「生きる力」を主軸に、社会で求められる力の育成を強く求めるようになっています。課題発見から解決までの能力や自分自身の理解、探究学習を通じて新たな価値の創造と未来への意識を持たせるなど、「総合的な学習」と異なり、「総合的な探究」で育成された能力を用いて教科学習に生かすことが目的とされています。また、社会に出た際に探究学習で学んだ思考プロセスなどを活用することなども目的とした授業になっています。

 これらを比較してみると、平成30年告示の改訂学習指導要領において明記された「総合的な探究の時間」では、これまでのように課題発見から解決までの能力や主体的な学びを育むという点は継続されています。

 加えて、新たな「総合的な探究の時間」では「資質・能力」の育成も行うことが明記されています。それだけでなく、思考力・コミュニケーション能力などの能力育成や職業や自己の進路に関する学習を行い、自己理解や将来の在り方生き方を考えるなどの学習活動も行うべきであると明記されています。

文部科学省HP 平成29・30・31年改訂学習指導要領の趣旨・内容を分かりやすく紹介より引用
文部科学省HP 平成29・30・31年改訂学習指導要領の趣旨・内容を分かりやすく紹介より引用

 つまり、文部科学省が求める「資質・能力の三つの柱」にある「知識・技能」 だけにとどまらず、見えづらい学力「思考力・判断力・表現力」や見えない学力「学びに向かう力・人間力」を網羅的に育成する授業としての位置づけになっています。

次のページ
「総合的な探究」と「教科学習」の関連はどうするべきか?

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この記事の著者

山崎 泰正(ヤマザキ ヤスマサ)

 2012年にベンチャー企業へ新卒入社。セールスとして全社新人賞、マネジメント賞などを複数受賞。2015年よりフリーランスやスタートアップ企業の創業メンバーとして従事。複数の新規事業立ち上げ、事業責任者、事業開発、採用、組織開発、人事制度設計をボードメンバーとして行う。2019年Edv Future...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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