ICTの活用により学年・地域の垣根を越えて学び合える
8月17日、アクティブ・ラーニング先進校である武蔵野大学附属千代田高等学院(東京都・千代田区)を会場に、「第5回 すららアクティブ・ラーニング」最終プレゼンテーション大会が開催された。
「すららアクティブ・ラーニング」の特徴は、全国からエントリーした参加者がコミュニケーションツールとしてICTをフル活用することだ。エントリーした児童・生徒は、5月から6月の1カ月間、イベント専用に開発された「すららチャットマップ」を使い、事務局から投げかけられた「さまざまな解なき問い」に対し議論を重ねる。そして国内外の小学生から高校生まで、さまざまな年代の児童・生徒が、所属している学校や塾、学年、地域の壁を越え協働学習を進めていく。
協働学習の過程で、参加者は主体的に社会課題解決について考え、アクションを提案するリーダーシップを育んでいく。同時に、その場にはいない、初めて知り合った相手と、互いの意見の違いを認め合いながら傷つけあうことなくそれぞれの主張を発信し合い議論を進める。それにより、ネットコミュニケーションリテラシーを身につけていくのだ。6月には、全国の児童・生徒がWeb会議システムでつながり、オンラインワークショップも実施された。
小学生から高校生までがチームで競うプレゼン大会、優勝は長崎県の中学1年生チーム
今年のテーマは「科学技術の力で、地域を活性化するアイデアを提案しよう!」。専用SNSでの議論やオンラインワークショップを経て、8月17日の最終プレゼンテーション大会に集まったのは、73のチームから外部有識者を交えた審査員により選ばれた5チームだ。
最優秀チームに選ばれたのは長崎県長崎市の真未来塾「Nagasaki Global Innovators Team B」という中学1年生のチーム。高校生も多数エントリーした中で長崎県の中学1年生チームが優勝したことからも、参加地域のバラエティや学年の多様性がうかがえる。
中学1年生の提案「地域活性化の核となる商店街の取り組み」
最優秀チーム、真未来塾「Nagasaki Global Innovators Team B」は、「クローズアップ長崎『地域活性化の核となる商店街の取り組み』」と題し、地域の商店街を活性化するための取り組みについて、長崎市の小中高生100名超へのアンケート結果や、地元商店街組合理事長へのヒアリングに基づき考察を深めた。
3名チームでのエントリーであったが、1名が海外留学中であったため、2名でプレゼンテーションを実施。プレゼンテーションでは、1人がニュースキャスターに扮して地域活性化をレポート、もう1人がコメンテーターとして専門的視点を交えながらコメントした。また、一人二役で地域商店街の理事長に扮し、地域商店街の窮状や、施策の失敗について語るなど、プレゼンテーションの構成はユニーク。映像をフル活用しながらも段ボールで手作りした小道具により臨場感を演出し、何度も会場に笑い声が響いた。
地域商店街の窮状を救う打開策としてチームから提案されたのは、GPSとAIを活用した配達サービスや買い物アプリ、VRを活用した食育イベント、外国人対応のためのAI自動翻訳機の導入などである。現実の社会においても、すでに自動宅配ロボットが実用化に向けて試験運転されている映像を紹介し、提案されたアイデアは決して実現不可能でないことを印象付けた。科学技術の進歩を役立てることにより、地方在住者や高齢者など情報弱者になりうる人を「誰一人取り残さない」というメッセージが観衆の心に響いた。