Flipgridで音読を楽しく!
音読はとても重要な学習活動です。その重要性についてはここで論じませんが、さまざまな研究報告でその重要性が示されています。
低学年のころは、多くの子どもが一生懸命になって音読に取り組むのですが、学年が上がるにつれて少しずつおろそかになり、高学年になると少しだけやって終わりという場合もあるようです。実は私もそうでした。適当に読んで、自分で音読カードにチェックを入れて、素知らぬ顔で提出していました。
なぜ、低学年のときにできていたことを、高学年になるとやらなくなるのでしょうか。子どもたちに質問したところ「学年が上がると練習をしなくてもそれなりに読めてしまうし、黙読で十分と考えるようになっているから」との回答がありました。また「1年生のころは家族が音読を聞いてくれていたけれど、だんだん聞いてくれなくなったので、なんとなく音読が粗末になっていった」と答えた子もいました。
確かに、聞き手がいない音読を黙々と続けるのは、子どもたちにとって難しい課題かもしれません。しかし、教員も家族も、子どもの音読を集中して聞いてあげる時間をつくることは難しいでしょう。
そこで、Flipgridを使って音読に取り組ませてみましょう。Flipgridを使うと、音読練習を継続しやすい仕組みをつくることができます。
音読練習用のトピックを作成する
まずはグループに、何を音読するのか、わかりやすいタイトルをつけてトピックを作成します。音読練習は継続して同じトピックに動画を蓄積したほうが、練習回数の確認や上達の比較を行いやすいため、タイトルには日付を入れないほうがいいでしょう。
タイトルの下の「Prompt」には音読の際に意識させたいことや気をつけさせたいことを簡単に記入します。
Promptには1000文字まで記入できるので、音読させたい文章を記入しておくと、パソコンやタブレットだけで音読練習をすることができます。ただし、著作物をインターネット経由で配信することになるため、授業目的公衆送信補償金制度の利用が必要です。
また「Media」には教員の範読を載せておくと、音読を苦手とする子がそれを聞きながら練習することができます。
Web版のFlipgridの場合は、Webブラウザを2つ同時に起動し、一方で範読動画を再生しながら、もう一方で音読を録画することができます。iOS版やAndroid版ではアプリの同時起動ができないので複数の端末が必要です。
その際、イヤホンをつけて動画を再生すると、子どもの音読に教員の範読が入り込みません。100円ショップで売っているマイクつきのイヤホンを使うと、音読の音声もクリアに収録されるので、可能であれば用意することをおすすめします。
「Closed Caption」は「日本語」または「なし」に設定します。音声認識による日本語字幕を使った音読の上達度測定を試みたことがありますが、現時点での認識精度では実用的ではありません。英語の認識精度は高めなので、英語の音読練習では発音チェックに活用できます。
録画可能時間は10分まで設定できますが、音読練習の場合は短めに設定して、繰り返し練習させるのがいいでしょう。10分の音読は大人でも飽きてきます。
音読を投稿してもらう
トピックの設定が完了したら子どもたちに音読を投稿させましょう。Flipgridでの音読練習が初めての場合は、初回のみ一斉に始めてもいいですが、バラバラに始めたほうが声をはっきりと録音できます。同じ文章を音読することになるため、一斉では音声が重なってしまい、あとで再生したときに聞き取りにくくなります。
録画終了後に撮影するサムネイル画像には、何回目の練習かわかる画像を設定します。テキストで数字を入力してもいいですが、手っ取り早いのはセルフィー撮影をするときに指で回数を表現することです。リズム良く次の音読練習に進むことができます。
授業の最初と最後を比較する
ある程度練習を重ねたら、初回の音読と最新の音読を比較させてみるといいでしょう。音読が苦手な子は、自分が上達していることに驚くかもしれません。音読が得意な子は、逆に粗末になっていることに気づくかもしれません。いずれも蓄積しているから比較可能なことです。
その際、授業の最初に感想や予想をFlipgridに残しておくと、授業での変容を確認しやすくなります。国語では最初に教材文を読んだときの感想や疑問などを、理科や社会では、その授業のめあてや問題に対しての予想を、ノートやワークシートに残します。
では、Flipgridを使って、感想や予想を動画で残してみましょう。感想や予想を書くのが苦手な子どもは、何も考えていないわけではありません。自分の頭の中にある考えを文章に表現できないだけの場合が多いのです。
Flipgridで感想や予想を発表させると、ノートに書かせるのとは異なり、友だちの考えが音声として耳に届いてきます。 自分で文章を作るのが苦手な子は、友だちが話していることに耳を傾けて、表現をまねできるのです。何度もまねを繰り返すことで、表現の幅が広がり、少しずつ自力で文章をつくれるようになっていきます。