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若年性のがんについて教育者や周囲の人たちが知っておきたいこと

小児がんについて親と教師が知っておいたほうがよいこと――「AYA世代(思春期・若年成人)のがん」編

若年性のがんについて教育者や周囲の人たちが知っておきたいこと 第2回

 年間100万人を超えると言われるがん罹患者数の中では0.25%と、希少がんともいえる存在の「小児がん」。そのため、患者のこどもたち自身、ご家族はもちろん、彼らを取り巻く学校関係者や友人などにも十分な情報はありません。また、つらい治療を終えて社会に戻ったこどもたちには、その後も長期のフォローアップが必要です。治療中、治療後も安心して就学ができるように学校関係者や保護者が知っておくべきことについて、NPO法人「キャンサーネットジャパン」理事の中井美穂が、小児がん専門医にインタビュー。第2回は日本小児血液・がん学会理事長の大賀正一先生に「AYA世代(思春期・若年成人)のがん」について、お話をうかがいました。

AYA世代のがんとは

中井美穂(以下、中井):今回のテーマは「AYA世代のがん」ですが、この表現を聞きなれない方も多いことかと思います。どのような定義になりますでしょうか?

大賀正一(以下、大賀):AYAはAdolescent and Young Adult(思春期・若年成人)の頭文字をとったもので、15歳から39歳くらいまでとされています。しかし、年齢の定義は難しいものです。小児がんを担当する小児科は、病院の受付では通常15歳までの窓口です。ただし、実際には15歳を過ぎて大人になり、独り立ちするまでを担当することが少なくありません。AYA世代は人生の大きな転機を迎えるときで、この間に起こるがんはもちろん、それを乗り越えてきたこどもたちもさまざまな課題に向き合うようになります。この時期のがんの治療は、内科に行ったほうがいいのだろうか、小児科に行ったほうがいいのだろうか?と迷うことになると思います。「AYA世代のがん」という言葉は、小児がんについてお話しする上で、非常に重要な位置を占めるようになっています。

中井:そうなのですね。一点おうかがいしたいのですが、15歳以上でも若い方の場合は重篤な病気が疑われた際に、まず小児科に行った方がいいのでしょうか?

大賀:症状によるかと思いますが、判断は難しいですね。例えば、15歳の白血病疑いの患者さんがかかりつけの医師から私の勤務する病院にご紹介された場合、血液内科か、小児科か、受付も迷います。ご紹介された先生が小児科医の場合は小児科につながることが多いのですが、血液内科へおつなぎするケースもあります。急性リンパ性白血病であれば、成人までは小児のプロトコール治療が効果的だとわかっています。骨髄性の場合は、疾患にもよりますが小児向けがよいか、成人向けがよいか、治療法を検討しなければなりません。高校生や19歳くらいであれば、まずはそれまでにかかりつけの小児科からご紹介されるのがよいかもしれません。もちろん、15歳以上の方が最初は内科にいらしても、内科と小児科の医師が相談して最適な治療方針を考えますので、受付と実際の治療では担当科がスイッチすることもあります。また、小児科、内科の別だけでなく、AYA世代の患者さんに小児がんで多い腫瘍が睾丸や卵巣にできたときには、治療計画について泌尿器や婦人科の先生とご相談をしながら進めていきます。

中井:小児とAYA世代のがんの治療方法はかなり違うものなのでしょうか?

大賀:小児白血病のグループスタディは症例が少ないこともあり、歴史的にも早く始まりましたので、これにより治療法の改善が進みました。AYA世代の患者さんの場合には医学的に最適治療を選択すると同時に、思春期特有の告知や学習環境、二次性徴のことなど、病状に応じた細やかな配慮を医療者が共有して考えることになります。15歳だから、20歳だからと年齢でわけるのではなく、それぞれが成長して独り立ちするまで一人ひとりに柔軟な対応が必要になると感じています。また、この時期にがんを克服した患者さんにも、その後の観察や健康に対する配慮などについて、小児科医が長くサポートすることが大切だととらえています。

中井:ところでAYA世代の患者さんが入院した場合に、小児病棟に入院することもあるのでしょうか?

大賀:あります。小児病棟は付き添いがいらっしゃることも多いので、病室の調整は悩ましいところです。思春期のこどもたちの場合、男女を一緒にはできないですし、付き添いにはその性別も考慮する必要があります。人数も多く、男女別の部屋、年齢による部屋、外科系、内科系など、多様性に満ちたベッドの配置になっています。

中井:周りがみんなこどもの患者さんだと、AYA世代の患者さんにとっては違和感がありますよね。かといって、成人病棟に入ると話し相手がいない、こども扱いされるのが気になることもあるかもしれませんね。また、患者さんの数が少ないがゆえに、同じ悩みを共有できる同世代の相手がいないということも患者さんにとっては寂しいことなのかな?とも思うのですが。

大賀:そうですね。しかし、世代で区切っても病棟、病室、治療設備といった問題もあり、どの病院でも悩んでいらっしゃると思います。同じ病気の方同士での交流という意味では、成人とは異なり、小児がんの場合は年齢が若いほど疾患が稀少かつ多様なので、同じ病気の患者さんが同じ病室になりにくいかもしれません。

中井 美穂(なかい みほ)

 日本大学芸術学部を卒業後、フジテレビに入社。「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」など多くの番組に出演。フジテレビ退社後、97 年から「世界陸上」のメインキャスターを務める他、映画・演劇のコラム、イベントの司会、朗読など幅広く活躍。 2019年NPO 法人キャンサーネットジャパン理事に就任。がん啓発のイベント・市民公開講座の司会などの活動をしている。

AYA世代のがん患者をとりまく環境

中井:新型コロナウィルス感染拡大の影響でAYA世代の患者さんが学習面でとても苦労されている、というお話を聞いたことがあるのですが、実際はいかがでしょうか

大賀:病棟でのAYA世代における教育環境には大きな影響があったと思います。私の勤める病院にも小学校と中学校の院内学級(分校)があるのですが、高等部はないのです。さまざまな状況の患児が入院中にも、学ぶことができる環境を整えることが必要です。インターネット環境の整備が院内で加速しましたので、皆さんそれぞれに工夫して勉強しながら治療を受けています。教育委員会や学校と連携が重要で、受験では苦労します。病室で試験を受けるときには、大きな音はだせませんし、さまざまな配慮が必要になります。

中井:AYA世代は思春期真っただ中なので、精神的にも肉体的にも揺れる時期かと思います。治療の中で一番気を付けていらっしゃるのはどんなところですか?

大賀:大切にしているのは、患者さんの気持ちです。そして、保護者の方、お家で待っているきょうだいがどんな思いをしているか、そういったことにも配慮します。回診や診察の時の会話が極めて重要で、毎日何回も患者さんの顔を見に行く、のが私たちの仕事でもあります。患者さんのことを一番心配しておられる保護者の方と寄り添い二人三脚でゴールを目指す治療環境を、私たちが提供できるよう心掛けています。小児医療センターではこどもが患者さんですが、付き添いのご家族や周辺も含めた環境づくりが大切です。

中井:AYA世代といえば反抗期とも重なると思いますが、治療に関する反抗期のようなこともあるのですか?

大賀:はい、もちろんあります。こどもたちもインターネットなどで自分の病気に関する情報を調べます。わかっていても聞かないこともあります。こちらもこどもたちの表情や態度など、さまざまな観点から彼らの気持ちをくみ取ることをいつも考えないといけません。

中井:こどもたちが調べている情報が、必ずしも本当に正確でない場合もありますよね。特にインターネットでは新しいものから古いものまで、さまざまな情報があふれています。

大賀:そうですね、私たちも常に一番新しい情報か確認しています。医学に関する知識のアップデートはこの10年でもますます加速していますので。そもそも私たちはこどもたちにありのままに接しています。そうでないと、彼らと一緒に病気に立ち向かうことができないことを実感しています。

大賀 正一(おおが しょういち)

 九州大学大学院医学研究院成長発達医学 教授/日本小児血液・がん学会 理事長。

 1984年山口大学卒業後、九州大学小児科入局。その後、同院周産母子センター助手、総合周産期母子医療センター准教授、周産期小児医療学講座教授、山口大学小児科学教授を経て2016年より現職。2018年より日本血液学会理事、2020年より日本小児血液・がん学会理事長。専門は小児血液学、免疫学。

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退院して学校に復帰する生徒を周りはどう迎えるべきか

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この記事の著者

特定非営利活動法人キャンサーネットジャパン(キャンサーネットジャパン)

1991年発足。がん患者が本人の意思に基づき治療に臨むことができるように科学的根拠に基づく情報発信を行うことをミッションとして活動。2001年にNPO法人化。活動を通して、がんと向き合う人々が自分らしくがんと向き合える社会を実現することを目指している。2014年より毎年開催しているジャパンキャンサー...

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