まずは飽きるまで遊ばせることが大切
Flipgridに限らず、 新しいツールやサービスをいきなり活用して、教科の授業のねらいを達成させようとすると、なかなか思うように進みません。ほとんどの場合、失敗します。なぜなら、具体的には、目の前のツールの操作に子どもたちの意識が集中してしまうからです。
GIGAスクール構想により1人1台の端末が整備されました。多くの子どもたちは、初めての自分専用端末を、いじりたくて、使いたくて、うずうずしている状態です。その状態で、昭和から続く「手はおひざ、お口にチャック」の授業を展開しようとしても、授業に集中できるはずがありません。初めてクレヨンを手にした子どもが、楽しさのあまり、テーブルや壁に絵を描いてしまうのと同じ状態です。
導入初期は、端末やツールを遊び尽くす時間をつくりましょう。時間がもったいないと感じる人もいるかもしれませんが、これは先行投資と考えてください。最初に使った時間は、あとから数倍になって戻ってきます。この時間をケチって、いきなり教科の授業でツールを活用しようとすると、子どもたちがダラダラと集中しない状態が続きます。
これは入学した新1年生に、鉛筆の使い方を指導するのと同じです。まずは最低限のツールの使い方を指導する。そして思いっきり使わせます。
とは言うものの、遊ばせる時間を確保することは難しいでしょう。そこで、すきま時間や休み時間に子どもたちが端末やツールを使わせるのです。
慣れないうちはツールに意識が集中する
端末やツールの操作に慣れないうちは、そのツール自体に意識が集中してしまい、その他のことにはあまり意識が向きません。
自動車を運転している人は、自分が初めて自動車免許を取ったときを思い出してみましょう。免許取り立てで、音楽を聴く余裕もなく、家族に話しかけられることさえもわずらわしく感じたことはありませんか。ですが、少し慣れてくると、運転すること自体が楽しくて、何の目的もなく車を走らせていたのではないでしょうか。子どもたちが新しい端末やツールを使い始めたときは、まさに同じような状態なのです。端末やツールを使うことが一番で、それ以外のことには意識が向きません。
Flipgridを使い始めたばかりのときに、やれ教科の目的だ、授業のねらいだなどと、教員側がいろいろ苦心しても、子どもたちには伝わりません。まずは思いっきり遊ばせて「使うことが当たり前」の状態にしてしまいましょう。これはすべての新しいツールやサービスを取り入れるときの鉄則です。
ICT活用に慣れてくると、新しいものを導入したときの遊ぶ期間を徐々に短くしても大丈夫になっていきます。しかし、ゼロにはなりません。短時間でも遊ばせる時間が必要です。