ファイザー社製新型コロナワクチン、接種対象が12歳以上へ。子どもへの説明はどうする?
厚生労働省は5月末、ファイザー社製ワクチンの対象年齢を、16歳以上から12歳以上に引き下げ、これにより満12歳の小学6年生からワクチン接種が可能となりました。
学校現場でもワクチン接種の話題があがっているという話を聞くので、「ワクチンとは何か?」「ワクチンを打つとどんなメリットがあるのか?」をお話しさせていただきます。
わたしたちの日常には細菌やウイルスなどさまざまな病気を引き起こす原因となる微生物(病原体)が存在し、これらが体の中に入ると私たちは病気になったり、ひどい場合は死に至ることもあります。
しかし、私たちのからだには「免疫」という仕組みがあり、一度入ってきた病原体が再び体の中に入ってきても病気にならない、もしくは病気にかかっても重症化しないようになっています。
この仕組みを利用したのがワクチンです。
ワクチンを接種することで、わたしたちのからだは病原体に対する免疫を作り出します。ただし、通常の感染(自然感染)のように実際にその病気を発症させるわけではなく、病原体の毒性を弱めたり、無毒化したりして、コントロールされた安全な状態で免疫を作るので、安心していただければと思います。
今回、この12歳以上へのワクチン接種について、日本小児科学会が以下のように「子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方」を発表していますので、ご紹介します。
・子どもを新型コロナウイルス感染から守るためには、周囲の成人(子どもに関わる業務従事者等)への新型コロナワクチン(以下、ワクチン)接種が重要です。
・重篤な基礎疾患のある子どもへのワクチン接種により、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の重症化を防ぐことが期待されます。
・健康な子どもへのワクチン接種には、メリット(感染拡大予防等)とデメリット(副反応等)を本人と養育者が十分理解し、接種前・中・後にきめ細やかな対応が必要です。(新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~より、2021年6月16日 公益社団法人日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会)
基本的には、この日本小児科学会の考え方に基づいて検討されることをお勧めします。
その上で「教育現場」では、ワクチンを接種しないことによる「いじめ」や「差別」が起こらないようにすることが重要だと思います。
「ワクチンを打たない」という選択ができる環境を整えることが重要
まだ私の耳には入ってきていませんが、今後さらにワクチン接種が加速する中でワクチンを接種していない人がバイ菌扱いをされたり、仲間外れにされたりという「いじめ」や「差別」が起こることが容易に予想されます。
これらの問題をゼロにすることはかなり難しいかもしれませんが、「ワクチンを打たない」ということを選択できる環境を整えてあげることが一つの解決策なのではないかと私は考えます。
具体的には、「ワクチン接種=感染しなくなる」ということではない、ということをしっかり伝え、その上で自分にとっての「感染症対策」は何がベストなのか?を考える機会を作ってあげるのが良いのではないでしょうか?
「ワクチンを打ったらどうなるのか?」「ワクチンを打ったらマスクはしなくていい?」「ワクチンを打たなかったら周囲にどんな影響を与えるのか?」などを生徒自身に考えてもらい、ワクチンを接種することは単なる感染症対策の一つに過ぎないということに気がついてもらうことが大事だと思います。
さらには、「ワクチンを接種しないなら、感染症対策をさらにしっかりやらないといけない」という意識が生まれ、感染症対策の再徹底にも繋がるのではないかと思います。