はじめに
福島県の楢葉町立楢葉中学校で社会科教員をしている根本太一郎です。日々「社会科の授業を通した『感動』をもたらすこと」を目標に、授業作りに励んでいます。前回の記事では「防災授業」について紹介しました。今回は、総合的な学習の時間で全校一丸となって行っている「模擬会社Nalys(ナリーズ)」について、昨年度行った実践をご紹介します。なお、楢葉中学校については前回の記事をご覧ください。
総合的な学習の時間では何をするの?
総合的な学習の時間というと、どのような活動をイメージしますか? 職場体験や福祉についての活動、または地域の企業や自治体と提携した取り組みなどを想像するかと思います。本校ではなんと、企業の経営を授業の中で行います。それが、模擬会社Nalysです。全校生が5つの部門に分かれ、楢葉町の特産物を用いた商品開発や広報活動、地域の探究活動を行います。部門はそれぞれ「第1・2・3製造部」「広報部」「地域連携部」という名前です。
実際に開発した商品は、本校の文化祭である「ゆずり葉祭」や楢葉町で行われるイベント「ならSUNフェス」、さらに活動の集大成として、東京の日本橋にある福島県の物産館「日本橋ふくしま館 MIDETTE」で販売体験活動を実施します。昨年度は全校生で実施しましたが、今年度は3学年のみで実施する予定です。みなさん、2023年10月27日はぜひ日本橋にお越しください。お待ちしています!
第1・2・3製造部では、町にゆかりのある企業や事業所と協力して商品開発を行います。昨年度の商品は、次の4種類でした。第1製造部では「ならは~とケーキ」というパウンドケーキ、第2製造部では「しっパイサクッ」「花柚子ちよ子」というお菓子、第3製造部では「ゆーtiful」というハンドソープをそれぞれ開発しました。
楢葉町では近年、さつまいもの生産が活発に行われています。昨年度、町内に日本一の官署貯蔵施設が建設されました。また、昔から各家庭では柚子がさかんに栽培されてきました。こうした背景があることから、柚子やさつまいもを用いたお菓子やハンドソープの企画・開発をします。さらに企業の方との打ち合わせを通して、試食やPOP作り、陳列の方法などを中学生が考えます。まさに、実生活に即した「生きた学び」と言えます。
広報部は全国へNalysの活動を発信することを目標に、Twitter(現:X)やInstagramといったSNSでの情報発信や、本校のWebサイトの更新などを行います。以下のポスターも生徒がレイアウトや配色を考え、町の広報誌に折り込んで各家庭や事業所に配布しました。
昨年度、私が担当した地域連携部は、地域を知り、探究することをねらいに、楢葉町の魅力を発信することを目的とした「地図作り」を行いました。学習指導要領と関連付けたり、生徒の実態を考慮したりして次のように活動の目標を設定しました。
地域連携部の目標
- 学習の見通しを持たせ、粘り強く課題に取り組む態度を育む。
- 地域についてより深く知り、その魅力や特色について生徒自ら体験する活動の機会を確保する。
- 問題解決的な学習や、自分の考えを発信したり共有したりする活動を効果的に実施するためにICTを積極的に活用する。
活動の流れは以下の通りです。
順番 | 活動内容 | 活動の詳細 |
---|---|---|
1 | Nalysオリエンテーション | 地域連携部の方向性の決定・確認 |
2 | フィールドワークの実施(1) | Jヴィレッジの情報収集 |
3 | 紹介する場所の整理・検討 | 生徒間のディスカッション・プレゼンテーション |
4 | 紹介の仕方の検討 | 生徒間のディスカッション・プレゼンテーション |
5 | 計画表の作成 | 各係の活動の方向性の確認 |
6 | フィールドワークの実施(2) | ここなら笑店街・木戸川渓谷・天神岬の情報収集 |
7 | 地図・動画の作成 | 各係での活動 |
8 | ゆずり葉祭 | 発表・販売体験活動 |
9 | 日本橋福島館 MIDETTE | 販売体験活動 |
10 | ふるさと創造学 | 発表 |