はじめに
はじめまして。福島県の楢葉町立楢葉中学校で社会科教員をしている根本太一郎です。日々「社会科の授業を通した『感動』をもたらすこと」を目標に、授業作りに励んでいます。特に、地域の自然や人材を生かす教材化、効果的・効率的なICTの活用について研究しています。今回は、1学期の5月に楢葉町役場、富岡消防署楢葉分署と連携して行った「防災授業」についてご紹介します。
楢葉中学校ってどんな学校なの?
楢葉町立楢葉中学校は、福島県の浜通りにある相双地区の南部に位置しています。気候が穏やかで、海に面した自然豊かな土地にある中学校です。2011年に発生した東日本大震災により、沿岸部では津波被害を受けました。また、この地震に伴う福島第一原子力発電所の事故によって、全町避難を経験しました。楢葉中学校も2017年まで、いわき市にて仮設校舎で過ごしていました。現在、学校を再開して7年目になります。総合的な学習の時間で行う「起業家教育」を軸に、地域の魅力を生かした教育活動を展開しています。
なぜ、防災授業なの?
楢葉町は、東日本大震災による被害をもとに、町内において定期的に防災に関する放送が流されたり、町の公式LINEアカウントから防災に関する情報を発信したり、各家庭などに防災無線が必ず常備されたりしています。また、町民による東日本大震災の伝承活動が積極的に行われるなど、防災意識が高い地域と言えます。一方、本校の生徒は東日本大震災の前後に生まれています。そのため、実際に地震や津波による被災の記憶がほとんどありません。震災による甚大な被害を受けた本町だからこそ、中学2年生の社会科の地理的分野「地域調査の手法」の単元において、次のようなねらいを設定し、授業を実施しました。
単元の目標
- 災害発生時には、地域の関係機関の支えにより地域社会が成り立っていることを実感させるとともに、自分の身や家族、地域の人々の安全を守る防災意識を育む。(主体的に取り組む態度)
- 災害発生時には、どのような対応をすればよいか、地形・気候的特色をもとに、具体的な行動を考察し、表現することができる。(思考・判断・表現)
- 地図の読み取りなどによって地域の地形的特色を把握することを通して、自然災害への対策について自分ごととして捉え、理解することができる。(知識・技能)
今年度は、この授業を行うにあたり、前半では地図の読み取り方を4時間、外部講師を招いた防災学習を後半で3時間という単元設定の工夫をしました。