なぜ1人1台端末? 情報教育と教科指導におけるICT活用
「教育の情報化」という言葉には「情報教育」「教科指導におけるICT活用」「校務の情報化」の3つが含まれています。その中で授業に関わるものは「情報教育」と「教科指導におけるICT活用」の2つです。
インターネットで調べ学習をしたり、付箋アプリで考えを共有したりするなど、教科のねらいを達成するため、また教科の学びを深めるためのICT活用が「教科指導におけるICT活用」です。それに対して、子どもの「情報活用能力」そのものを育成する教育が「情報教育」となります。小学校でのプログラミング教育も、情報教育に含まれています。まったく別のものというわけではなく、お互いが連携し合っているイメージです。まずはこの違いをしっかりと押さえておきましょう。
それでは、情報活用能力とはどのような能力なのでしょうか。文部科学省では下図のような3観点8要素として定義しています。「情報活用の実践力」は、情報を収集したり、判断・表現・処理・創造したりするといった情報の活用、「情報の科学的な理解」は、情報手段、つまりコンピューターやインターネットといったものがどのような仕組みで動いているのか、あるいはどのような特性があるのかなど理解することを指します。そして「情報社会に参画する態度」には、情報モラルやセキュリティ、情報社会の中での個人の責任といったものが含まれています。情報教育は、これらの情報活用能力を育成することがねらいになっているのです。
今期の学習指導要領には、以下のような記述があります。
(1)各学校においては,児童[生徒]の発達の段階を考慮し,言語能力,情報活用能力(情報モラルを含む。),問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力を育成していくことができるよう,各教科等の特質を生かし,教科等横断的な視点から教育課程の編成を図るものとする。
出典:文部科学省「【総則編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説」P.189 第1章 第2『教育課程の編成』2の(1)
この「学習の基盤」とはどのような意味でしょうか。「言語能力」を例にすると、聞く、話す、読む、書くといった言語能力そのものは国語教育で育成します。一方で、この身につけた言語能力は、算数科で自分の考えを述べたり、理科で実験結果を考察議論したりするなど、それぞれの教科の学びを深めるために重要な役割を果たします。このように、身につけた言語能力がさまざまな教科の学びを深めるための基盤となることが、ここでの学習の基盤ということです。
こちらを情報活用能力に置き換えると、情報教育で育成した情報活用能力は、社会科の資料を検索したり、理科で実験結果のグラフを描いたりするなど、教科の学びを深めるための基盤として発揮されるということになります。
言語能力の育成が低学年の段階からあるように、情報活用能力の育成も低学年から段階的に行っていく必要があるわけです。
なお文部科学省が、IE-Schoolにおける指導計画を基にステップ別に整理した、情報活用能力の体系表例を示していますので参考にしてみてください。ちなみに低学年段階では「コンピュータの起動や終了、写真撮影などの基本操作」や「画像編集・ペイント系アプリケーションの操作」などがあります。こうして一つひとつ見ていくと難しくないですね。
そのような情報活用型の授業が求められる現在では、それ相応の学習環境が必要となります。そこで構想されたのがGIGAスクール構想です。コロナ禍で急に必要とされたからではなく、それ以前から計画されていたものです。こうして、現在の1人1台端末が実現しました。
参考
- 文部科学省「【総則編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説」
- 文部科学省「教育の情報化に関する手引(令和元年12月)」
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森山潤(2021)「GIGAスクール導入の背景と学習基盤としての情報活用能力」兵庫教育大学大学院