本稿はリクルートテクノロジーズのブログに掲載された内容を再編集の上、転載したものです。
世界最大級のEdTechコンベンション「The Bett Show」
リクルートの新技術開拓部門「アドバンスドテクノロジーラボ」の塩澤です。
教育を巡るさまざまな課題をテクノロジーによって解決へとつなげる「EdTech(エドテック)」は、近年日本のテクノロジー業界でも注目が高まっています。また、教育現場でもプログラミング教育の必修化などを背景に「教育×テクノロジー」への関心が高まっており、今後の動向が注目されています。
また、昨今の新型コロナウイルスによる影響で、日本でもオンライン授業を本格的に開始している学校が出てきました。ここへきて、ITを活用した教育現場の改革を身近に感じている方が多いのではないかと推測します。
そうしたEdTechの世界最大級の国際コンベンションである「The Bett Show(以下、BETT SHOW)」が、今年1月にイギリス・ロンドンにて開催されました。私も視察の機会に恵まれたため、世界各国の企業・政府が推進しているEdTechの最新動向や、そこから見えてきた日本のEdTechの今後の可能性などをレポートしたいと思います。
なお、8月28日時点で、イギリス政府のビジネスイベント再開方針発表を受け、次回のBETT SHOWは、2021年1月20日~22日に開催予定で準備を進める旨の広報がされています。詳細は、イベントホームページで随時ご確認ください。
いま、世界が教育のデジタル変革に本気になっている
私が「EdTech」と「BETT SHOW」に興味を持った背景は、2017年に遡ります。リクルートが展開する学習アプリ「スタディサプリ」のAI技術開発に携わったことで、「教育×テクノロジー」の可能性に強い関心を抱くようになりました。例えば、いま教育を巡る問題として、裕福で子どもに投資できる資金力があるほど子どもに良い教育を受けさせることができ、学力が上がる傾向が示唆されるという研究結果が存在しています。このように、経済力によって学力・学歴に差が生まれてしまう現状をテクノロジーによって是正できないか。これが、私がEdTechを勉強したいと考えたきっかけです。
BETT SHOWでは各国がブースを出して自国の取り組みや企業の紹介をしていましたが、中でも印象的だったのは、BETT SHOWの開催地であるイギリスのブースでした。日本の文部科学省にあたるイギリス教育省がブースを展開し、国として教育のデジタル化の支援に力を入れている印象で、通信網やパソコンなどのデバイスといったデジタル教育環境の整備に税金を投入しているほか、EdTech推進のカギを握っている教育者のITリテラシーの向上にも、国を挙げて取り組んでいるようでした。あわせて環境、教員、教材といった全方位に力を入れることでEdTechを推進するケーススタディを蓄積し、その成功モデルをグローバルに展開しようとしているのではないか、という印象も受けました。
なぜ世界中がEdTechの推進に躍起になっているのか。それは、会場内のアリーナで行われた教育関係者やEdTech企業の講演から分かってきました。いま世界中では、ビッグデータ、AI、ロボティクスなどのテクノロジーによってデジタルトランスフォーメーションが進み、私たちの働き方や仕事のあり方、世の中に提供すべき価値観などが変わりつつあります。このような社会の中で、いまの子どもたちが大人になったときにどう生きていけばいいのか。そのために必要なスキルは何かと考えることを、重要な課題に挙げていました。世界では、テクノロジーによって子どもたちの学びをどう変革するかを、官民一体となって考えているのです。