レゴブロックを使ったアイスブレイクを体験
カンファレンスは、主催であるレゴ エデュケーション日本代表の須藤みゆき氏のあいさつからスタートした。須藤氏は、「今日は体験や経験などをぜひ持ち帰っていただきたい。ワークショップや先生方による事例発表では、授業でどんな風に使ったらいいかという具体的なアイデアも提示しているので、これからの活動に役立てていただければうれしい」と、会場へ呼びかけた。
その後行われたのが、レゴブロックを使った全員参加のアイスブレイクだ。参加者は近くの人同士でチームを組み、配布された「レゴ デュプロ」のブロックセットを使って、できるだけ高く積み上げるアクティビティにチャレンジした。このアイスブレイクの意図は、「高く組み上げることが本当の目的ではなく、こうしたアクティビティを通じて初めて会った人とも仲良くなることができる」というもので、プロックを通じてコミュニケーション力を養えるメリットを改めて実感することができた。
自ら体験することが本当の学びにつながり、未来を作っていく
LEGO Education International代表のトム・ホール氏は、冒頭で「聞いたことは忘れる、見たことは覚える、やったことはわかる」という中国の格言を引用し、「本当の学びは見せてもらうのではなく、自分が関わって参加すること」だとして、「未来を作る力を育て、芽生えさせる」ことを一貫して行ってきた、レゴ エデュケーションの歴史と製品を紹介した。
レゴ エデュケーションは、教育に特化したグループとして1980年に設立されて以降、「核心的な教育の取り組みを行い、その範囲を広げてきた」とホール氏は振り返る。中でもマイルストーンとなったのが、1998年に登場した「レゴ マインドストーム」だ。今年で21周年を迎えたこのシリーズは、現在「EV3」というバージョンで広く活用され、世界的なロボットコンテスト「WRO」も行われている。さらに2009年には「WeDo」が登場。現在は「WeDo 2.0」として、日本のSTEAM教育の分野で大成功を収めている。そうした歴史を語った次にホール氏が紹介したのが、今年発表され2020年初頭に発売予定の「レゴ エデュケーション SPIKE プライム」(以下、SPIKE プライム)だ。
「レゴ社は創立以降、生きていく上で必要な『ライフスキル』を身に着ける手助けをしてきた」と話すホール氏は、北欧で人気のある物語『長くつ下のピッピ』から「これはやったことがないから、絶対できるはず」という言葉を引用し、「とても明るく、自信に満ちた、子どもならではの視点のすばらしい言葉」と評した。そして、「人生において自信を持つことは大切。自信を持って挑戦をしていくことが成功につながる」と考えを熱く語った。
さらにホール氏は、「私も父親として、子どもが自信を持って新しいことに取り組むことはうれしい。逆に、『わからないし、きっとできない』と言われたらガッカリする。子どもには自信を持ってほしい。自信を持つことで人生が開ける」としながらも、「自信を持つことができる時期は人によって異なる」とも話す。
ホール氏は実姉のエピソードに触れ、「学生時代は自信を持てなかった姉が、結婚して母になったことで自分に自信が持てるようになった。結果、大学に入り直して良い成績を収め、現在は看護分野で活躍している。姉の場合はタイミングが遅かったものの、自信を持ったことで、その後の人生が良い形で進み、成功につながった」と紹介した。
「このように、教育において自信は最も重要だ」と話す一方で、現実では「中学生の75%が、自分に自信がないゆえに学習を阻害している。国際的な傾向として、やればできるという姿勢ではない。日本も同様だ」という。
さらにホール氏は全世界の教育者にリサーチした結果として、「95%がハンズオンで学習することは、STEAM分野での自信につながる」と解説。「STEAM分野に自信のある子どもたちはそのほかの教科についても自信がある比率が高い」という結果を示した。
しかし、「90%以上の子どもたちがハンズオンの学習を楽しんでいるものの、十分な時間がとれていない」という現状があるという。それを踏まえ、「レゴ エデュケーションの教材は、この部分をサポートできる。『STEAM』と『自信』の2つのピースが合わさることがとても大事だ。自信は広がっていき、伝染する。これは未来に向けて大変意味を持っている」と、参加者に訴えた。
ホール氏はここで再び「SPIKE プライム」について触れ、「SPIKE プライムは中学生という、生活や人生が変わり、大きな課題に直面していく時期にこそ、子どもたちに学習のプロセスを学んでほしいという思いで用意した」と話した。
さらに、「STEAM教育で『技術を知らない』『経験が少ない』などの不安を持っている先生でも、好奇心を持って子どもたちと一緒に学ぶことができ、5~10分ですぐに教え始めることができる直感的なツール」と紹介し、「世界中の教育者とイノベーターたちに届けたい」と、「SPIKE プライム」への思いを熱く伝えた。
「SPIKE プライム」は4テーマで33のレッスンを用意
続いての特別講演では、LEGO Education 教育コンテンツマネージャーのヤニック・デュポン氏が登壇し、「SPIKE プライム」のコンテンツを解説した。
デュポン氏は「SPIKE プライム」で組み立てたロボットと専用ソフトを使い、デモンストレーションを行った。「初めてキットを使う人でも簡単にプログラミングすることができる。説明は細かいことを省略し、非常にシンプルだ。短時間ですぐ実験までできる」と、実際にプログラミングしながら解説した。
さらに「『SPIKE プライム』は、ひとつのソリューションがベストではなく、いろいろな解決策がありうることを試せる。生徒たちが自分なりの解決策を、現実世界での問題でも見いだすことができる」と話した。
次にコンテンツの紹介を行い、レッスンの集まりである4つのユニットについて、それぞれ解説した。
「インベンションスクワッド<設計と開発>」では、どうやってソリューションを作るのか、さらに作ったものでどのように課題を解決するのかを学ぶ。まず課題を識別していろいろなプロトタイプを作り、それらをテストし基準に照らして評価する。そして実際に展開する手順だ。こうしたプロセスの中で、実体験で学ぶことができるという。
ほかにも、起業家精神を養う「キックスタートビジネス<社会とロボット>」では問題を細分化し、どのようなアルゴリズムなのか、さらにデバッグする手法などを学んでプログラミング的思考を養う。「コンペティション<ロボットカーの制御>」では、チームワークを身に付ける要素もある。「ライフハック<生活の中の技術>」は日常の生活の中の技術を改善するもので、自宅や学校にある身近なものを改善し、より良いものにしたいときに使うことができる。
こうしたレッスンはすべて生徒向けに作られており、教室ですぐに実験できるようになっている。また、教師を手助けするためのオンラインプラットフォームも用意される。今回のデモは英語版で行われたが、日本語版も提供されるという。
レッスンの導入部には動画が用意されており、最初に動画を見て概要をつかむことで、教師も生徒も理解を得やすいという。レッスンは全部で33あり、40~45分単位で実験して学ぶ。最後にデュポン氏は、「教室で皆さんがどのように教えるのか、これから感想を聞くのが楽しみだ。私が教師をやっていた時代に、これがあれば良かった」と、笑顔で語った。
さらにホール氏が「自分で実際に体験してみることが一番。ぜひ、手で触って、レゴファミリーの新しいメンバーである『SPIKE プライム』を試してほしい」と会場に呼びかけ、特別講演を締めくくった。