矢野経済研究所は、国内のデジタル教育コンテンツ市場について、分野別の市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした調査結果を、7月13日に発表した。同調査は、デジタル教育コンテンツ提供事業者を対象に、2月～6月に行われている。
調査結果によれば、2022年度のデジタル教育コンテンツ市場規模（「映像授業」「デジタル教材」「授業・学習支援ツール」3分野の合計）は、事業者売上高ベースで前年度比11.1％増の632億円となった。
調査対象である3分野のうち、「映像授業」は競合状況の激化によるコンテンツの廉価化や、大学入試の形式の変容として総合型選抜や学校推薦型選抜が台頭し始めたこともあり、一般選抜に対応した学習需要の停滞などを受けて前年度割れとなった。残りの2分野は、経済産業省の「EdTech導入補助金」によるコンテンツ導入のハードル低減などが寄与し、市場が拡大している。
デジタル教育コンテンツ市場は、コロナ禍で制限された対面教育の代替手段として、学校教育、民間教育ともにデジタルを活用した学習の提供を強力に推し進めた結果、2020年度を境にその規模を大きく拡大。とりわけ、文部科学省のGIGAスクール構想の前倒しによる小中学校における児童生徒1人1台の端末整備の実現は、学校現場におけるICT環境を一気に進展させ、2021～2022年度にかけて「EdTech導入補助金」による導入の需要拡大を生じさせるなど当該市場の拡大に寄与している。
一方で、学習者用端末の整備は実現したが、学校ごとで端末の活用状況に対するばらつきが生じている。自治体によっては、学習用ソフトウェアの導入に関する予算を捻出できずに活用が広がらないといった課題が、依然としてみられる。
そのほか、2020年前後より学習塾や英会話などでメタバースを用いた学習サービスが登場しており、2022～2023年にかけて関連サービスのリリースが活発化しつつある。これらの学習サービスは、オンライン上でも対面での学習指導と同等のコミュニケーションを実現する目的で提供されるケースが多く、生徒はメタバース上に設けられた教室（学習スペース）にアバターとして通い、講師・指導者に気軽に質問でき、生徒同士の交流によって学習に対するモチベーションの維持、向上を図れる。
メタバースを活用した学習サービスは、アバターで参加するため不登校の問題を抱える生徒が参加しやすいのも特徴となっている。対面での質問等が苦手な生徒も講師・指導者とのコミュニケーションがとりやすく、オンライン上で海外の世界遺産を訪問したり、安全面で難しい理科実験にも挑戦したりなど、現実世界では体験できないような学びを体感できる。これらのメリットを求める学習者の需要を享受して、今後も関連サービスを増加させていくと予想される。
2023年度は「EdTech導入補助金」の付与がなく、予算を捻出できない自治体・学校では学習用ソフトウェアの導入を制限する方向に進んでいる（ただし「探究的な学び支援補助金」の事業は実施されている）。民間教育では大学入試の変容によって、一般選抜に対応した学習需要に停滞がみられる。さらに、コロナ禍を境に活発化したデジタル教材の導入にも落ち着きがみられていることなどを受けて、デジタル教育コンテンツ市場の伸び率は鈍化傾向で推移するものとみられ、同社は2023年度の同市場の市場規模を、前年度比0.5％増の635億円と予測している。
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