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キーパーソンインタビュー

楽しいついでに、社会を変えてしまおう――プログラミングの無限の可能性を、まつもとゆきひろ氏が語る


 12月13日に表彰式が行われた「Ruby biz Grand prix 2018」で、EdTech企業2社が大賞と特別賞を受賞した。学習管理SNSを提供するスタディプラスと、社会人向け動画学習サービスを提供しているグロービスだ。プログラミング言語「Ruby」の特徴を生かし、新たな価値を創造しているサービス・商品に与えられるこの賞を、「教育」の事業が受賞する意味は大きいように思う。今回のEdTech企業の受賞について、審査委員長を務めたRubyの生みの親、まつもとゆきひろ氏にインタビューしお話をうかがった。また、同氏は、Rubyを中心にした子ども向けのプログラミングイベントなどにも携わっている。どういった考えで取り組まれているのか、プログラミング教育とIT業界の関わりについても、アイデアをうかがった。

テクノロジーが入り込めなかった分野「教育」に関わってがんばっている企業を応援したい

 Ruby biz Grand prixは、Rubyを活用して新たな価値を創造し、さらなる飛躍を期待できるサービスに与えられる。今年は、過去最多40組の応募の中から最終選考に10組がノミネート。そこには2社のEdTech企業が含まれていた。

 社会人教育大手のグロービスは、いつでもどこでも学べる動画学習サービス「グロービス学び放題」で特別賞を受賞。また、スタディプラスは、学習管理SNS「Studyplus(スタディプラス)」で見事大賞を受賞した(ニュース記事はこちら)。

 審査委員長のまつもと氏は、どういった点を評価したのだろうか。

審査委員長を務めたまつもとゆきひろ氏
審査委員長を務めたまつもとゆきひろ氏

まつもとゆきひろさん
プログラミング言語「Ruby」の開発者として国内外に広く知られるエンジニア。愛称はMatz。島根県松江市在住。Rubyを中心としたプログラミングコンテスト「スモウルビー・プログラミング甲子園」の実行委員長や「中高生国際Rubyプログラミングコンテスト」の審査員長を務めるなど、プログラミングの持つ可能性を子どもたちにも伝えている。

 ――今年で4回目となる「Ruby biz Grand prix」。応募数が増えただけでなく、応募されたサービスのクオリティが高かったとおっしゃっていましたが、今年は特にどんな傾向がありましたか?

 まつもと氏:応募で集まった40件全体というよりは、今回受賞した企業の傾向になりますが、「社会的な問題を解決しよう」という取り組みが多かったような気がします。例えば、「お金の流れをスムーズにさせよう」「テクノロジーによって教育を支援しよう」「社会的な問題をテクノロジーで解決しよう」と取り組んでいる企業に、賞を差し上げることができました。

 過去にももちろんそういった企業からの応募はありましたが、今年は特に目立った印象です。

 ――今回は特に、EdTech企業(スタディプラス株式会社や株式会社グロービス)の受賞が印象的でした。

 まつもと氏:教育というのは、実は新しいテクノロジーが参入しづらい領域です。特に学校教育は入りづらい。スタディプラスさんはそんな学校教育に絡めていますし、グロービスさんは社会人になってからの教育。たしかに、「教育」というジャンルであったことに対しての評価はありました。

 それまでテクノロジーが入り込めなかった分野に関わってがんばっている企業は、応援したいなという思いがあります。

プログラミングは、楽しみややりがいを得て、社会にもインパクトを与えられる気軽な方法

 ――EdTechの文脈でいうと、まつもとさんご自身もプログラミングの子ども向けイベントなど、教育に関わる活動をされていますよね。

 まつもと氏:私自身はプログラミングの可能性を非常に信じているので、より多くの人にそれを享受していただきたいと思っているのです。

 例えば、プログラミングのスキルを持っていたら、職業として生活が成り立つのは確か。すごく楽しいので趣味としても成立するし、あるいは趣味と仕事が一緒になったような、幸せな状況にある人もいるでしょう。あるいは、自分が作ったソフトウェアによって社会が変わっていくのを見ることによって、承認欲求を満たしたり自己充実感を得られたりもします。

 プログラミングというのは、こういったことを得られる、一番気軽な方法ではないかと思っています。例えば、政治家になって社会を変える、小説家になって自分の小説で社会を変えるといったことは、できないわけではないけれどもそれはそれで大変です。あるいは、大きな企業のプロジェクトによって社会を変えるとなると、巨大なチームの一員なので自分の思惑だけでは動かなくなるわけですね。

 ソフトウェアを作ることは比較的少人数でもでき、社会にインパクトも与えられる可能性があります。そういう意味では、プログラミングというのはポテンシャルの高い道だと思っていて、それができる人がもっと増えたらいいなとは思います。

 なので、Rubyを勉強したい・興味がある人がいれば「どうぞどうぞ」となるんだけど、でも、個別の学習方法のことになると、私は独学のプログラマーなのでどうしたらいいか分からないことが多いです。

 ――実際に聞かれたときはどのようにお答えされるのですか?

 まつもと氏:モチベーションが重要だと思うので、「ここまでやりました」「こんなに結果が出ました」と自分の成果を喜んで、それを繰り返して学んでいくのが一番いいのではないかな。私もプログラミングを独学していたときはそういう感じでした。1つプログラムを動かしてみて、「Hello, world!」が出せたら「すごい、”Hello, world!”出た!」と喜んで、それを繰り返してプログラマーとしてのスキルを伸ばしてきたので。

 自分が作ったもの、変えたものの結果がすぐ見えて、「じゃあこうすればもっと新しいことができるようになるんだ」と取り組むことで、スキルを伸ばしていければよいのではと。そういう経験を(これからプログラミングを学ぶ人も)できたらいいなと思います。これをどう教育のカリキュラムに落とし込むかについては分からないのですが……。

 よく「Rubyってどうやって勉強したらいいですか」と聞かれる方がいらっしゃるんですけど、僕はRubyを勉強したことはないので(笑)、個別の勉強をどうすべきか、ということについてはあまりアイデアがないんです。

 ――では、「どうRubyを勉強したらいいか」と聞かれたら?(笑)

 まつもと氏:「この本いいって言ってましたよ」とかですかね(笑)。

「社会を変える」のはゴールではなくて、副作用

 ――では、まつもとさんが実際にプログラミング教育のどんな活動に携わっていらっしゃるのか、具体的にお伺いしてもよろしいですか。

 まつもと氏:直接的にはあまり多くは関わっていないのですが、例えば「スモウルビー・プログラミング甲子園」の実行委員長や「中高生国際Rubyプログラミングコンテスト」の審査員長を務めています。若い人たちが自分の成果を見てもらう機会は、応援したいなと思っています。

 ――そういった場所で、子どもたちにはどんなメッセージを伝えてらっしゃるのでしょうか。

 まつもと氏:基本的には先ほど述べた通りですね。プログラミングというのは自分のやりたいことを達成させて、自分が楽しい。楽しい結果、ついでに世の中が良くなったりするから、「自分の成果でついでに社会を変えてしまおう」みたいなことを言ったりしています。

 社会を変えることって目的にならない方がいいと思うんですよ。特に若いうちは。自分が楽しんで、結果的に、他の人にもプラスの影響を与えられたらそれでいいかな、と思っていて。(プログラミングをやる理由は)「手に職」でも「趣味」でもいいけれど、「社会を変える」というのはゴールではなくて、副作用でいいんじゃないかと考えています。

次のページ
「触れる」機会を広げるためのプログラミング教育は、IT人材育成とはつながらなくていい

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この記事の著者

岡田 果子(編集部)(オカダカコ)

2017年7月よりEdTechZine編集部所属。慶応義塾大学文学部英米文学専攻卒。前職は書籍編集で、趣味・実用書を中心にスポーツや医療関連の書籍を多く担当した。最近は英語学習のアプリやオンライン講座に興味がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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