ウェザーニューズは、山形県山形市が同社の気象IoTセンサー「ソラテナPro」の本格運用を開始したことを、6月19日に発表した。同センサーによる観測データは、山形市立の小・中・高全52校における子どもたちの熱中症対策に役立てられる。

従来、山形市内の学校では教職員が休み時間や部活動の前などに、WBGT計を用いて暑さ指数を測定していた。しかしながら、近年の猛暑によって測定頻度が増加しており、業務負担が課題となっていた。この課題を解決すべく、山形市とウェザーニューズは、2024年1月に包括的な連携・協力に関する協定を締結。デジタル技術を活用した熱中症対策として、全国に先駆けて市立学校6校に「ソラテナPro」を設置する実証実験を行っている。
「ソラテナPro」は、気温・湿度・気圧・雨量・風向・風速・照度の7要素を、1分ごとに観測する小型の気象観測機となる。クラウド上に蓄積された観測データをもとに、環境省熱中症予防情報サイトに示されている計算式で「暑さ指数(熱中症リスク)」を算出し、「危険」や「厳重警戒」といった4ランクで判定する。観測データは、アプリや専用Webサイトから確認できるほか、学校のモニタ表示やスマートフォンのプッシュ通知を活用できるため、校庭での測定が不要になる。

事前の実証実験では、山形市の主導によって市立の小中高校全52校の中からモデル校6校が選定され、「ソラテナPro」が設置された。試験導入後は、校舎内にいながら、いつでも教職員用の端末などで暑さ指数や気温などの観測データを把握でき、教職員の業務負担が軽減されたほか、正確なデータに基づく熱中症対策が可能になっている。
一方で、実証実験では、電源の確保が必要な「ソラテナPro」の設置場所における課題も見つかった。設置校の中には、グラウンドから離れた場所のコンクリートやアスファルト上に設置しなければならないケースもあり、輻射熱の影響でグラウンドの測定値と比較して暑さ指数の数値が高く算出されてしまった。また、木や建物の陰になる場所に設置されたケースでは、暑さ指数が日向のグラウンドより低くなることもあり、山形市は設置環境の改善策として太陽光パネルによる電源供給が最適であると判断している。
さらに、近隣校に観測データを共有すべく、ウェザーニューズが山形市内の気象状況を調査して運用に最適な台数を検討。その結果、市立学校全体がおおむね8つの気象区分に分類できることが明らかになった。山形市が実証実験中に設置校や近隣校を対象に実施したアンケートでは、すべての設置校から教職員の負担軽減につながり、学校での活動判断に役立ったとの回答が寄せられている。

これらの実証実験の結果を受けて、山形市は太陽光パネルの活用や気象区分に基づいて「ソラテナPro」の設置場所を検討し、2025年度から設置校を8校に拡充して本格導入に至った。観測データは設置校の近隣44校にも共有し、市立全52校の熱中症対策に活用される。
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